「一生かけて償う」と言ったのに…今も意識戻らない4歳女児 タイヤ直撃、民事裁判で運転の男「賠償責任争う」 女児の父が抱く強い不信感「なぜ今さらなのか」札幌市西区

札幌市西区で2023年、不正改造した車から脱落したタイヤが当時4歳の女の子を直撃した事故をめぐり、損害賠償を求める民事裁判が8月始まりました。
事故から2年半以上が経った今も、女の子の意識は戻っていません。
事故当時、車を運転し、車の不正改造にも関わっていた若本豊嗣受刑者(52)は、刑事裁判では損害賠償について「一生かけて償う」と述べていました。
しかし、今回の民事裁判では、自らの過失や賠償責任を争う姿勢を示しています。
女の子の父親は、HBCの取材に「今さら責任を争うことに納得できない」と語り、憤りをあらわにしました。(HBC報道部 成田颯記者)
3億円の賠償求める訴訟…4歳女児は現在も意識戻らず
事故が起きたのは、2023年11月14日。札幌市西区平和の市道で、走行中の軽乗用車から左前のタイヤが外れ、歩道にいた当時4歳の女の子を直撃しました。
女の子は頭などに大けがをし、事故から2年半以上が経った今も意識が戻っていません。
事故を起こした車には、タイヤを車体の外側にはみ出させる部品「ワイドトレッドスペーサー」などが取り付けられ、不正な改造が施されていました。
女の子の家族は、車の所有者や若本豊嗣受刑者、保険会社などを相手取り、ことし3月札幌地裁に損害賠償を求める民事裁判を起こしました。
請求額は、これまでの治療費や慰謝料、今後必要になる介護費などで、総額は3億円に上ります。
若本受刑者「請求棄却」を求める…自らの賠償責任を争う姿勢
この民事裁判で、若本受刑者が提出した答弁書では、原告側の請求棄却を求めています。治療費など損害の発生を認めつつも、自らの賠償責任を争う構えです。
答弁書で若本受刑者は、車の所有者から依頼を受けて不正改造に関わったことなど一部の事実関係を認める一方、自らが行った改造がタイヤ脱落の原因だとは限らないと主張。
脱落したタイヤの取り付けやナットの締め付けには関与しておらず、この車を所有し、日常的に使用していたのは自分ではないなどとして、自らの過失や賠償責任を争っています。
父親「いまさら争うのか」不信感露わに
若本受刑者側の答弁書を読んだ女の子の父親は、強い違和感を覚えたといいます。
「若本受刑者が車の改造に関わり、事故当時も車に乗っていたことなどを踏まえれば、事故への責任があるのは明らかで否定のしようのない事実。刑事事件でもそのように判決が出ている」 「責任があるかないかという議論を、今になってこの民事裁判ですることに納得できない。誰の責任が重いのかを争うのであれば、加害者側で話し合ってほしい」
刑事裁判では「一生かけて償う」と言っていたのに…
女の子の父親が特に納得できないと話すのが、刑事裁判で示した姿勢との違いです。
2025年4月に行われた刑事裁判で若本受刑者は「今後は免許を取るつもりはない、車を運転する資格がない。法律を軽視した自分のせいで、被害者と家族に多大なる迷惑をかけてしまい、本当に反省しています」と述べ、損害賠償について「支払う。一生かけて償いをしようと思っています」と説明していました。
父親によりますと、刑事裁判で、父親が車の所有者と今後の支払いについて話し合うよう求めた際にも、若本受刑者は、応じる意向を示していたといいます。
しかしその後、若本受刑者からは弁護人を通じて、賠償について車の所有者と話し合うつもりはないと回答があったということです。
父親は、「その場では責任を認め、支払っていくと言っていた。なのに、今度は支払う責任を争う。なぜ今さらなのかと思う」と話しています。
執行猶予中に無免許運転182回「賠償金を捻出するため」と弁明も
若本受刑者をめぐっては、刑事裁判の判決後の行動も問題になりました。
2025年4月、タイヤ脱落事故をめぐる刑事裁判の判決で札幌地裁は、「改造は事故の危険性を高めるもので非常に悪質」とした一方、「被害者に対し入院費用200万円を払っているほか、過ちを認めて再び運転しないなど反省をしている」として、若本受刑者に懲役3年・執行猶予5年の有罪判決を言い渡しました。
しかし、ことし2月。若本受刑者は、札幌市や小樽市で軽トラックを無免許で繰り返し運転した疑いで逮捕・起訴されました。執行猶予中の犯行でした。
ことし5月の公判で、検察側は無免許運転の回数を182回と指摘。無免許運転を繰り返した理由について若本受刑者は「仕事をして事故の賠償金を捻出するためだった」と説明していました。
札幌地裁は、「仕事をして事故の賠償金を捻出するためだったとしても正当化はできない」などとして若本受刑者に拘禁刑1年の実刑判決を言い渡しました。
タイヤ脱落事故の執行猶予も取り消され、若本受刑者は現在、合わせて4年の刑に服しています。
無免許運転の理由を「事故の賠償金を捻出するため」と説明しながら、数か月後の民事裁判で、自身の賠償責任を争う…
女の子の父親 「賠償のために働いていたから無免許運転をした、という説明までしていた。それなのに今度は、自分にはそこまで責任がないと主張をする。都合によって言っていることが変わっているように感じる」
そして、若本受刑者がこれまでの裁判で示した反省の態度にも、疑問を感じざるを得ないとしています。
「刑事裁判では自分を良く見せるために『支払う』と言っていたのではないか。真面目に賠償するつもりだと言っていた人が、数か月後にはこうした主張をしている。そこに一番怒りを感じています」
所有者・保険会社も損害額や責任を争う構え
一方、車の所有者側は、事故について自らにも責任があることは認めています。ただ、原告が求める損害額については争っています。
将来の介護をめぐり、原告側が想定する自宅での介護を前提とした費用などは減額すべきだと主張しています。
また保険会社側は、不正改造車による事故で保険契約上の免責にあたるなどとして、原則として保険金を支払う責任はないと主張。仮に支払い義務が認められた場合でも、原告側が主張する損害額について争うとしています。
「娘の人生に何をしたのか受け止めて」終わらない家族の苦悩
女の子の父親 「家族にとって事故は何も終わっていません。娘はいまも意識が戻らず、今後も長期間にわたって治療や介護が必要です」 「事故を起こした側に、娘の人生に何をしたのかを受け止め、約束した責任と向き合ってほしい」
タイヤ脱落事故から2年半以上。刑事裁判が終わっても、女の子と家族の人生が続くなか、誰がどこまで事故の責任を負い、その損害と向き合うのか。
民事裁判で新たな争いが始まりました。