国連憲章の「旧敵国条項」巡り中国・ロシア・北朝鮮が連動して日本批判、政府は警戒…対外発信強化で対抗

日本政府は歴史認識を巡り、中国、ロシア、北朝鮮の3か国が連動して日本批判を展開していることに警戒を強めている。高市首相は国連総会で、国連憲章の「旧敵国条項」の削除を求めたが、3か国は足並みをそろえ、日本の防衛力強化の動きへの攻撃材料などに利用している。(土居宏之)
「いかなる国も、旧敵国条項を援用する余地はもはやない。削除を実現すべく、関係国への働きかけを続けていく」
首相は9日の参院本会議でこう強調した。「援用」する国として念頭に置くのが中露朝の3か国だ。
旧敵国条項は、第2次世界大戦で連合国の敵国だった日本などが再び侵略政策をとった場合、国連安全保障理事会の許可なしに軍事的な措置を取れるとした内容を指す。国連総会決議では1995年に「死文化」していることが確認され、2005年には削除方針も採択された。中国やロシアも反対していなかった。
だが、昨年11月の高市首相の台湾有事を巡る国会答弁以降、中国は旧敵国条項をたびたび持ち出してきた。在日中国大使館は同月、X(旧ツイッター)で「日本などが侵略に向けた行動を取った場合、中国など国連創設国は安保理の許可を要することなく、軍事行動を取る権利を有する」と投稿した。
首相が9月の国連総会の一般討論演説で、あえて早急な削除を要求したのは、こうした動きを踏まえたものだ。国連演説で日本の首相が言及したのは05年の小泉純一郎首相以来となった。外務省内には「寝た子を起こす必要はない」(幹部)などと慎重論もあったが、首相官邸からの強い意向で盛り込んだ。削除は首相就任前からの持論でもあり、首相は演説で「日本の誇りと名誉にかけて強く申し上げておく」と訴えた。
首相の演説に対し、中国は一般討論の最終日に答弁権を行使し、「日本の再軍事化が世界の平和と安定に対する脅威になっている」などと反発。北朝鮮も「日本は戦争国家への転換を加速している」と呼応した。日本政府は2回にわたって答弁権を使って反論し、条項を「時代遅れ」と認めた決議が中国を含む支持を得て採択されたことなどを指摘。「日本は歴史的事実に謙虚に向き合い、誠実に対処してきた」と説明した。
日本政府は、3か国の発信について「日本の防衛力強化をけん制し、日本と近隣国に亀裂を生じさせる狙いがある」(政府関係者)とみている。首相は第2次改造内閣の発足に伴い、歴史問題などで「対外発信を強化する」よう関係閣僚に指示した。7月に設置した国家情報局でも、歴史認識を利用した他国の影響工作の情報収集や、対抗策の検討を進める考えだ。