衝撃が走った埼玉県川口市「ケアマネジャー殺害事件」…昨年には横浜市鶴見区でケアマネが刺されたばかりだった

今年6月、埼玉県川口市で、ケアマネジャー(介護支援専門員)の女性が利用者宅を訪問した際、この住宅に住む無職の男(当時60歳)に包丁で刺され、死亡する事件が起きた。警察官が駆けつけた際、玄関内で倒れている鈴木希代子さん(同63歳)を発見した。男は通報後に自らの首を刺し、2人とも搬送先の病院で死亡が確認された。埼玉県警は、男が鈴木さんを襲ったとして殺人容疑で書類送検。その後さいたま地検は、容疑者死亡を理由に不起訴処分とした。
在宅介護の業界では「また起きたのか」と、衝撃が走った。つい昨年にも横浜市鶴見区でケアマネジャーの女性が刺される事件が起きたばかりだったからだ。2022年には埼玉県ふじみ野市で、訪問診療医が利用者の息子に散弾銃で撃たれて死亡する事件も起きている。訪問系サービスに従事する人の安全が脅かされる事件が相次いでいる。
国や自治体が有効な再発防止策を打ち出せない中、事件が起きた地域の住民や事業者は何を感じているのか。全国のケアマネジャーや事業所は、事態をどう受け止めているのか。相次ぐ殺傷事件は何を示唆しているのか――。社会福祉士の資格を持つルポライター、大月えり奈氏による連載【介護崩壊前夜 相次ぐ殺傷事件が示唆するもの】の第1回は、事件が起きた川口市内の取材で見えた現実をリポートする。
ケアマネジャー(ケアマネ)は、介護保険制度の下、介護が必要な人やその家族らの相談に応じ、必要なサービスを受けられるようケアプランを作る専門職だ。行政や介護サービス事業者、医療機関などとの橋渡しを行う。原則として少なくともひと月に1回、利用者の自宅を訪ね、心身の状態を確認する。“住み慣れた自宅で最期まで”と願う人たちを支える、要の存在である。
ケアマネや訪問介護員(ヘルパー)、訪問看護師、地域包括支援センター(包括)の相談員など訪問を伴う仕事に従事する人々は、「事前のリスク把握には限界がある」と口をそろえる。さらに、重大事件であるほど背景は根深く、検証は容易ではない。「どうすれば防げるのかがわからない」という困難さがあるのだ。
事件が起きた住宅で、長年、高齢の母親と2人で暮らしていた男は、地域住民の目に、どう映っていたのか。近くに住む男性(60代)はこう話す。
「ほとんど家に閉じこもっていたようで、交流はなかった。周りでは、関わらないようにしようとする人も多かった。暮らしぶりは静かで、てっきり母親は施設にいるのだと思っていた」
■血相を変えて「母親がいなくなった」と走り回る