台風19号で千曲川の堤防が決壊し甚大な浸水被害が出た長野市内では14日、風雨がいったん収まって救助や排水作業が進み、住民らが不安そうに見守っていた。
「どれだけやっても終わらない」
堤防が約70メートルにわたって決壊した穂保地区では、避難所などから一時的に自宅の様子を確認しに戻る人が多く見られた。同市穂保に実家がある宮本泰一さん(82)は、13日夜は車中泊し、14日朝に戻った。浸水で浮き上がった家具や畳で荒れ果てた屋内を見て、「もうしっちゃかめっちゃかで何から手をつけたらいいか。せめて電気が復旧すれば動きやすいのに」と嘆いた。
14日午前10時ごろに避難所から自宅に戻った同市穂保の岩崎武士さん(78)は小雨の中、倉庫や玄関先の泥をスコップでかき出していた。「どれだけやっても終わらない。(再び降り始めた)雨でまた泥が増えてしまうかな」と肩を落とした。
後日、り災証明書の発行をスムーズにするため、デジタルカメラやメジャーを手に、家屋の被害状況を写真に収める被災者もいた。同市大町の10代女性は「ネットで『浸水の高さを測っておいた方がいい』と見たのでやっているけれど、泥がすごいので動き回るだけでも大変」と話した。
避難指示解除されず「家はどうなっているのか」
千曲川沿岸の住民が避難した古里小(同市金箱)では、14日も多くの住民が避難指示解除を待っていた。
下駒沢地区から避難した寺沢祐子さん(65)は近くの衣料品店で購入した毛布を抱え「まさかこんなことになるとは。すぐ家に戻るつもりだったのに……」とうつむいた。同地区では13日午前11時ごろに避難指示が出ていたが、気付かず正午ごろから2時間ほど家で仮眠を取っていたという。その後、携帯電話を充電しようと向かった古里小で避難指示を知った。「家の様子はどうなっているのか。せめて着替えだけでも取りにいきたい」
赤沼地区から家族3人で避難した男性(32)は「堤防の工事をしたばかりで、まさか決壊するとは……。2階にいれば大丈夫だと安心しきっていた」と明かす。13日午前2時ごろ、半鐘の音を聞いて車で避難。同市豊野町の温泉施設などを転々とした。「一刻も早く帰りたいが、戻っても安全な状況なのか。誰に聞けばいいのかすら分からない」と疲れ切った表情を浮かべた。【原奈摘、菊池陽南子】