台風19号による豪雨で土砂崩れが多発した相模原市緑区。同区牧野では、土砂に巻き込まれた民家の60代夫婦の行方が今も分かっていない。土砂崩れがあったのは12日夜。災害医療分野で生死を分けるとされる「72時間」は過ぎた。それでも家族らは、固唾(かたず)をのんで警察や消防などによる捜索を見守っている。
行方不明となっているのは、佐々木睦(むつお)さん(67)と妻の定子さん(63)。捜索には、千葉県から駆けつけた長男の一彰さん(41)ら家族が立ち会う。「やさしさにあふれている二人です」。一彰さんは16日、そう話して山肌がむき出しになった現場を見つめた。
一彰さんは12日夜、東京都に住む妹からの「家がないよ」という電話で土砂崩れが両親の家を襲ったことを知った。泣きながら話す妹の声を聞いても「何を言っているの」と、にわかに理解できなかった。台風の勢いが弱まるのを見計らって実家に向かった。翌13日午前10時半ごろに着くと、懐かしい家は跡形もなかった。
一彰さんによると、睦さんはかつて東京消防庁の消防職員だった。定子さんは看護師で近くの病院に勤務していたといい、夫婦共々人命に関わる仕事に携わってきた。2人とも正義感が強く、人望があった。友人も多く、千葉から来ている一彰さんに宿泊場所を提供するなど、協力を惜しまない。近くに住む武井和子さん(71)は「とてもいい人たち。気の毒を通り越して言葉にならない」と声を震わせる。
捜索活動は連日続く。「一生懸命に救出活動をしてくれている人たちに感謝したい」。一彰さんは17日も捜索を見守っている。【池田直】