又吉直樹さん、連載小説の苦労明かす 新著トークイベントで西加奈子さんと対談

芥川賞作家でお笑いコンビ「ピース」の又吉直樹さん(39)の最新刊「人間」(毎日新聞出版)の発売を記念し、又吉さんと、直木賞作家の西加奈子さん(42)の対談が20日、東京都渋谷区の紀伊国屋サザンシアターであった。「人間であること、人間を書くこと」をテーマにした1時間45分で、親交が深い2人の軽妙な掛け合いが集まった約350人のファンを楽しませた。【山口朋辰/統合デジタル取材センター】
「人間」は又吉さんの3作目の小説にして初の長編。昨年9月から今年5月まで毎日新聞夕刊で連載した作品を加筆修正したもので、漫画家の夢を諦めた38歳の男が主人公。青春時代の仲間から久々に連絡を受けたことで物語が展開し、夢を実現できなかった人間のその後を描いている。今月10日に発売された。
又吉さんと西さんはともに大阪府出身で親交があり、小説家としてしのぎを削る間柄でもある。対談では、又吉さんが新聞連載での苦労について「物語が続いているとはいえ、その日から読む人もいるかもしれない。だから、毎回ひっかかるセリフや描写を入れたかった」と振り返った。西さんは「全然、あざとさがなかった」と、賛辞を贈った。
西さんは、登場人物の会話を「ほんまに狂い、孤独になってきている」と独特の表現で褒めたうえで、又吉さんに「ここまでのレベルの会話をしたいのなら、友達がいないのでは」と突っ込み、会場の笑いを誘った。西さんは「登場人物が役割を与えられていないまま話している」とも評し、話し手、聞き手、観察者、どの視点に立って書いているかと質問。又吉さんが「話している側と聞いている側の両方」と答えると驚いていた。さらに「穏やかなことが『誠実』と解釈される風潮があるが、(本当は)誠実は真っすぐで、血まみれになる(ほど激しい)はず。誠実でありすぎるが故に狂っていて、優しい」と、登場人物の描き方を称賛した。
又吉さんは「この時代に(本を)読んでもらえることがうれしい。全力で書いたので、たくさんの人に読んでほしい」と話すと、会場から大きな拍手が起こった。対談後、又吉さんは報道陣の取材に「(発売から10日たち)どう読まれるか不安な部分はあったが、いろいろな感想が来てうれしい」と話し、次回作について「二つぐらい書きたいものがあり、いろいろ調べている」と明かした。