岩国基地騒音訴訟、2審も国に賠償命令 約7億3540万円に増額

米軍と海上自衛隊が共同使用する岩国基地(山口県岩国市)の周辺住民が、国に騒音被害への損害賠償や自衛隊機と米軍機の飛行差し止めを求めた訴訟の控訴審判決が25日、広島高裁であった。森一岳裁判長は、過去に受けた騒音被害を認定して総額約5億8000万円の支払いを命じた1審・山口地裁岩国支部判決(2015年10月)を変更し、約7億3540万円の支払いを命じた。将来分の賠償や飛行差し止めの請求は1審に続いて退けた。
原告は、航空機の騒音を示す「うるささ指数」(W値)で我慢の限度とされる75以上の地域に住む654人。訴訟では①騒音対策などとして国が岩国基地東側の海面を埋め立てて沖合1キロに移設した滑走路(10年に運用開始)の有効性②米軍再編による厚木基地からの米空母艦載機部隊(約60機)の移転(17~18年に実施)が与える影響――の評価がポイントだった。
1審は沖合移設について「基地周辺の騒音状況に相当な変化をもたらした」と効果を一定程度認める一方、移設後も「原告の居住区域の相当部分がW値75以上の騒音状態にある」と被害を認定。W値75~90の区域で生活する原告に対し、1人当たり月4000~1万6000円を提訴の3年前から結審までの8年11カ月間について支払うよう国に命じた。
艦載機移転は控訴審の審理開始直後の17年8月にスタート。18年3月に完了し、岩国基地には極東最多とされる約120機の米軍機が駐機することになった。これを受け、原告側は控訴審で騒音発生回数が増加し、W値も悪化したとして賠償を増額するよう要求。国は「客観的なデータが乏しい」と反論していた。【池田一生、中島昭浩】

岩国基地への米空母艦載機移転
普天間飛行場の沖縄県名護市辺野古沖への移転と並ぶ在日米軍再編の柱。日米両政府の2006年5月の最終合意に基づき、17年8月から、厚木基地(神奈川県)の空母艦載機のうち主力の戦闘機など約60機を移転した。18年3月の完了後、岩国基地は米軍機約120機を擁する極東最大級の航空基地となった。
岩国基地滑走路の沖合移設
軍用機墜落の危険性や騒音の軽減を求める周辺住民の要望を受け、国は1992年に滑走路の沖合移設を決定。基地東側の海面約213ヘクタールを埋め立て、沖合約1キロに旧滑走路と同規模の新滑走路(長さ2440メートル、幅60メートル)を建設して2010年5月に運用を始め、11年3月末に移設を完了した。