「くるしくなるまでうんどう…」 結愛ちゃんの異常な環境、公判で明らかに

東京都目黒区で昨年3月、船戸結愛(ゆあ)ちゃん=当時(5)=が両親から虐待を受けて死亡したとされる事件で、保護責任者遺棄致死罪に問われた母親の優里(ゆり)被告(27)の裁判員裁判の初公判では、結愛ちゃんが過ごした異常な環境が明らかにされた。
検察側や弁護側の説明によると、結愛ちゃんの部屋には大量の貼り紙があった。「あさおきてからすること」と題した紙には「めざましどけいをはやくとめる」「いきがくるしくなるまでうんどうをする」「たいじゅうをはかる」などの“約束事”が多数書かれていた。5歳児には困難な、かけ算の九九や時計の読み方を練習する約束もあり、中には結愛ちゃんの血痕が残る貼り紙もあった。
結愛ちゃんは、このアパートに引っ越してから亡くなるまでの39日間、ほぼ外出せず部屋で過ごしていたという。食事は当初、母親の船戸優里被告が汁物や野菜を与えていたが、後に雄大被告が、ダイエット目的と称して食事を制限し、1日1~2杯の汁物を与えるのみに。約束事ができないと雄大被告がたたいたり、シャワーを浴びせたりする暴行を繰り返した。亡くなる3日前ごろからは嘔吐(おうと)を繰り返すようになったという。やせ細り、肌が乾燥し、足取りもおぼつかなくなっていた。
死亡した昨年3月2日の結愛ちゃんは明らかに力がなく、優里被告が「小学生になったら楽しいことをしようね」と言うと「うん」と返事をした。その後、嘔吐して「おなか痛い」と2度告げ、布団の上でまぶたを閉じた。以降、結愛ちゃんが目を開けることはなかった。
結愛ちゃんは死亡時、同年齢の平均体重約20キロを大幅に下回る約12キロしかなかった。遺体の写真を見た小児科医は証人尋問で「病的にやせて骨が目立ち、打撲や傷が多数あった」と述べた。結愛ちゃんは低栄養と免疫力低下で引き起こされた肺炎による敗血症で死亡したとされる。「5歳の子が低栄養で亡くなることは今の日本では起きてはいけないことではないか」。小児科医はこう話した。(加藤園子)