クマの苦手を探せ 忌避製品開発めざす 人とクマの共存を

ツキノワグマが苦手な臭いやモノは一体何なのか――。人里での熊の目撃や獣害が相次ぐ中、木材加工業の第三セクター「ウッディさんない」(秋田県横手市)と秋田大大学院理工学研究科(秋田市)が、大森山動物園(同)の協力を得て熊の苦手な臭いやモノと木材を組み合わせた製品開発に取り組んでいる。将来は特許取得も視野に入れており、関係者らは「人と熊の共存に役立てたい」と意気込んでいる。【中村聡也】
大森山動物園の熊展示場に直径20センチ、高さ15センチの杉の丸太が2本置かれた。1本は未加工、もう一方には熊が好む匂いとされる防腐剤が注入され、側面の3カ所の穴にワサビパウダーの固形物5グラム分が詰め込まれている。
普段、動物園で飼育されている雄の「コゴミ」(6歳)は興味津々の様子で防腐剤の注入された丸太に近づくと、ワサビパウダーをペロリとなめた。その様子をビデオカメラで撮っていた、秋田大の野田龍講師(42)=生物資源科学専攻=は「ワサビは苦手ではなさそうだ」。
研究の名称は「ツキノワグマによる標柱・案内板等の被害を防ぐ塗装・加工技術の開発と新製品の開発」。今年4月からウッディと秋田大が、大森山動物園の協力を得て取り組む研究だ。公益財団法人「あきた企業活性化センター」から約279万円の補助金を受けている。
ウッディと秋田大は2018年度、防腐処理された登山道の標柱や看板がかじられる被害を防ぐための塗装技術の開発に着手した。
19年度は新たにツキノワグマを飼育する大森山動物園の協力を得ることとし、実証実験に踏み切った形。20年3月をめどに熊がどんな臭いやモノが苦手なのか報告書でまとめたい考え。ゆくゆくはその成分を活用した木材加工技術の特許を取得し、製品化につなげる青写真を描いている。
熊の撃退グッズを巡っては、米国のカウンターアソールト社が1991年に世界で初めて商品化した熊忌避スプレーが有名だ。唐辛子の成分が入っているとされ、北米に生息するハイイログマだけでなくツキノワグマにも有効とされ、支持を集めてきた。
野田講師は「住宅の外壁や登山道の標柱などの分野で熊の苦手な臭いやモノを含めた木材製品を開発できれば、里と熊の生息域に境界線がつくれるはず」と話す。

秋田県内では山間部の過疎化などで熊が人里に出やすくなっており、人と熊の生息域が重なりつつある。県自然保護課によると県内では過去10年の目撃数が平均571件、人身被害は平均11人だった。今年は熊の餌となるブナの実が山間部で凶作となっており、1日時点で目撃件数は629件、かまれるなど直接的な被害は12人となっている。