「愛子天皇」議論を先送りにしたい安倍政権の本音

9月半ばに内閣改造を控える安倍政権にとって、皇位継承の安定のための議論が急務だ。そんななか、政府高官の口をついて出た安倍首相の本音に、宮内庁関係者が気を揉んでいる。
皇位継承資格者はいま、秋篠宮さまと悠仁さま、常陸宮さまの3人のみ。
「だから、将来的な皇族減少を見据えて“女性・女系天皇”が取り沙汰されているわけですけれど」
と、全国紙の宮内庁担当記者は言う。
「お盆明けのことです。ある政府高官が“立皇嗣の礼がある来年4月まで、女系天皇に関する議論は避けたい。とにかく時間をかけねばならない”と周囲に漏らしたのです。これが宮内庁関係者のあいだで話題に上っていまして」
この言葉がどのような話題となっているのか。
「立皇嗣の礼とは、秋篠宮さまが次の皇位を継承する皇嗣であることを示す国事行為です。来年4月までに議論が進み、女性・女系天皇を容認するようなことになれば、愛子さまが皇位継承順位1位となられる。それは避けるべきだという言い分ですが、発言の主とされる杉田和博官房副長官は“時間をかけなければならない”と繰り返しています。この点が、“やはり、うまく時間稼ぎをしたいというのが安倍政権の本音なんじゃないか”と波紋を呼んでいるのです」
では、政権の本音とはいかなるものか。
先の記者が続ける。
「各社の世論調査では“女性天皇”への賛成が約8割となっているにもかかわらず、安倍政権の動きは鈍い。7月末に読売新聞が報じた、“現在の皇位継承順位の維持を明確にしたうえで、具体的な安定継承策や皇族数の減少対策を検討する”との政府方針にも、安倍政権の意向が透けて見えます。先送りと批判されないように、菅官房長官などはオフレコで、“秋からやるよ”と、11月の大嘗祭以降の議論開始に触れていました」
政府高官はそのさらなる先延ばしを示唆したともとれるわけだが、当の杉田官房副長官に真意を訊ねても、「微妙な問題なのでコメントできない。あしからず」。ならば、と安倍首相のブレーンの八木秀次・麗澤大教授に聞くと、
「小泉政権で女性・女系天皇を、民主党の野田政権では女性宮家を検討し、女系天皇への道を開こうとしました。2回とも次の安倍政権で白紙に戻しています。野田政権時、安倍首相は男系男子による皇位継承の維持を主張する論文を月刊誌『文藝春秋』に寄稿しましたが、いまもその考えは1ミリも変わっていませんよ」
どうやら安倍首相は自身の在任中には女性・女系天皇へのシロクロをつけず、次の政権へ先送りしたいのが本音のようだ。皇室ジャーナリストの神田秀一氏は、
「小泉政権で女性・女系天皇を認めるとした報告書をまとめたとき、安倍首相は官房長官でした。その経緯を考えれば現在の意向だけを押し通すのは難しいでしょうし、首相になったら、がらっと意見を変えるというのもおかしな話です」
と首を傾げる。皇室ジャーナリストの山下晋司氏は、議論は急ぐべしという意見。
「現政権は、悠仁親王殿下がいらっしゃることで、まだ時間があると考えているのでしょう。現行法は男系男子に限定されていますので、その維持派は、検討はしても結論を出さなければいいのです。しかし、悠仁親王殿下が即位されたときに、支える皇族が一人もいない可能性もあります。私は、上皇上皇后両陛下がお元気なうちに皇室内で話し合われ、天皇陛下が、天皇家としてのお考えを国民に示されるのがいいと思います」
“愛子天皇”の可能性の可否をはっきりさせないことには、愛子さまもおつらいだろう。
「週刊新潮」2019年9月5日号 掲載