無料低額宿泊所規制へ 生活困窮者の居住環境など改善に期待 神奈川

元ホームレスなど生活の苦しい人たちが利用する無料低額宿泊所について、神奈川県などが設備や運営の基準を定めた条例を制定する。無料低額宿泊所は、劣悪な居住環境や粗末な食事の対価として高い利用料を生活保護費から不当に天引きするケースもあり、「貧困ビジネスの温床」と批判されてきた。条例化は国が求めており、生活困窮者の居住環境や待遇の改善が期待される。【田中義宏】
厚生労働省が2015年に行った調査では、無料低額宿泊所は全国に537施設(定員1万8201人)あり、入所者1万5600人のうち1万4143人が被生活保護者だった。1人当たりの平均面積が約4畳半(7・43平方メートル)未満の個室を持つ施設が200施設にも上る。
利用者の生活保護費が振り込まれる通帳などを管理しているのは203施設あった。このうち、23施設で契約に管理規定がなく、12施設で現金出納簿がなかった。自立支援のための職員を配置していない施設や、支援計画を作成していない施設もあった。
こうした現状をふまえ、利用者の環境や処遇の改善に向け、昨年6月に社会福祉法が改正され、今年8月には設備・運営基準を省令に定めた。現在はガイドラインで運用されているが、条例化を都道府県、政令市、中核市に求め、規制を強化する。
省令では、入居対象を「生活困窮者」に限定▽生活保護受給者が入居者総数の5割以上▽居室の面積を7・43平方メートル(約4・5畳)以上。地域の事情によっては4・95平方メートル(約3畳)以上▽建築基準法、消防法の順守と防火設備の配備▽避難訓練の年1回以上実施▽サービス内容・利用料など運営規定を届け出▽金銭管理は原則本人で、本人が管理委託を希望する場合は管理規定や帳簿を整備――などを規定している。ただ罰則はなく、現状で基準を満たさない施設についても施行後に基準に適合するよう努力させる経過措置を認めている。
条例化するのは県のほか、横浜、川崎、相模原の3政令市と中核市の横須賀市。そのほかの市町村は県条例が適用される。条例化に伴い、これまで施設を運営してきた民間企業やNPO法人などは改めて届け出をする必要がある。条例に違反すれば行政指導を受ける。
県と川崎、相模原両市は現在開会中の議会に条例案を提出。横浜市は6日開会の市議会定例会に提案予定で、横須賀市は議会提案に向けて市民らから意見を募集している。