長崎舞台の映画「祈り」 県内各地で撮影 被爆75年の来夏上映へ

雪の降るクリスマス、原爆で傷ついた女性2人が、戦争の傷痕を残すため、解体迫る浦上天主堂に忍び込む――。昭和30年代の長崎を舞台にした映画「祈り―幻に長崎を想(おも)う刻(とき)」が製作される。県内各地で撮影があり、被爆75年の来夏に全国上映される。【今野悠貴】
原作は、長崎市出身の劇作家、田中千禾夫(ちかお)(1905~95年)の戯曲「マリアの首」(59年)。カトリック信徒でケロイドが残る女性(高島礼子さん)と、被爆地で男に乱暴され報復を誓う女性(黒谷友香さん)の2人が主人公だ。昭和32(1957)年、復興が進む長崎で、原爆で焼けた浦上天主堂の解体を耳にした2人が、ひそかに被爆マリア像を盗む計画を立てるという筋書きで、終戦から12年たっても差別や不十分な援護策に苦しむ被爆者の姿を描く。
11月に同市内で松村克弥監督(56)ら関係者による製作発表会見があった。県内のロケは来年2月からで、レトロな趣漂う長崎市の館内市場や路面電車内、川棚町の魚雷発射試験場跡などで撮影し、当時の空気感を再現するという。主題歌は、長崎市出身のさだまさしさんの「祈り」に決まった。
松村監督は「戦争が刻々と忘れられる時代に、社会の片隅でひっそり生きた庶民を描きたかった」と意気込んだ。田上富久市長は「原爆が人間に何をもたらしたのかを知る映画で、多くの人に関心を持ってほしい」と期待した。映画は、来年5月、5年に1度の核拡散防止条約(NPT)再検討会議が開かれる国連本部で先行上映し、7月に長崎、9月に全国で上映する予定。