真核生物の「祖先」培養成功 サイエンス誌が「今年の10大成果」に選出

海洋研究開発機構などの研究チームが、深海で採取した泥を使って、ヒトをはじめとする「真核生物」の祖先に当たるとみられる微生物の培養に世界で初めて成功したと明らかにした。単純な生物が複雑な生物へと進化した謎に迫る発見だとして、米科学誌サイエンスは20日、今年の10大研究成果の一つに選んだ。
培養された微生物は直径約0・0005ミリ(0・5マイクロメートル)の「古細菌」(アーキア)の一種。泥から人間を作ったギリシャ神話のプロメテウスにちなみ「プロメテオアーカエウム」と名付けた。
地球の生物は「細菌」「古細菌」「真核生物」の3種類に大別される。真核生物は古細菌の一種から進化・誕生したとの説が有力だが、実際の祖先に近い古細菌を培養して分析できた例はない。このため培養は世界中で競争になっていた。
チームは2006年、有人潜水調査船「しんかい6500」を使い、紀伊半島沖の深さ約2500メートルの海底で泥を採取。自作の装置で深海環境を再現するなどし、多数の微生物を培養した。18年に単独培養できた古細菌は、真核生物と共通の遺伝子が多数あった。また他の細菌と共生し、長い触手のような腕を伸ばすなど、非常に変わった振る舞いをした。
海洋機構の井町寛之主任研究員は「常識外れの生き方をしていて本当に驚いた」と話す。
真核生物が細胞内に有しエネルギーを生み出す「ミトコンドリア」は、元は別の生物だった細菌が取り込まれたのが起源だと考えられている。チームは、プロメテオアーカエウムのような古細菌が腕を使い、後にミトコンドリアになる細菌をのみ込んで共生を始めたのが真核生物の起源とする仮説も立てた。

研究成果の論文は、まだ学術誌に掲載されていないが、サイエンス誌は「私たち全ての究極の祖先に光を当てた」と高く評価した。10大成果のトップにはブラックホールの影の撮影を選出。他に量子コンピューターの優位性を証明した米グーグルの研究などを選んだ。【池田知広】
サイエンス誌が選んだ今年の10大研究成果
★ブラックホールの影の撮影
・恐竜を絶滅させた小天体衝突の詳細分析
・古代人類「デニソワ人」の外見再現
・エボラ出血熱の治療薬の開発
・量子コンピューターの優位性の証明
・真核生物の起源に迫る古細菌の培養
・太陽系外縁天体の接近撮影
・嚢胞性(のうほうせい)線維症の新治療薬の登場
・栄養失調と腸内細菌の関係の解明
・人工知能がポーカーの複数人対戦で勝利
※★はトップ
真核生物
遺伝物質を核膜で包んだ「細胞核」を細胞内に持つ生物。動植物など複雑な生命が該当し、約20億年前に誕生したとされる。一方、大腸菌などの細菌や、メタン菌などの古細菌は核を持たない「原核生物」に分類される。