「総合的に判断した」。カジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致の申請見送りを表明した千葉市の熊谷俊人市長は7日の定例記者会見で、理由についてこう繰り返した。IRを巡る汚職事件が見送りの判断に影響したことを否定したものの、判断の詳細については語らなかった。
熊谷市長は、昨年の台風被害や国が示した申請期間(2021年1~7月)が想定より早かったことなどを見送りの理由に挙げた。だが、判断過程の詳細を問われると、「分かりやすいドラマがあったわけでなく、じりじり、じりじりと(見送りの方向に)倒れていく中で最終的に判断した」と述べ「総合的判断」という言葉を繰り返し使った。
決断した時期については「確定したのは年が明けて。昨年12月に入ってから厳しいと判断していた」と説明。IRを巡る汚職事件が影響したことを否定した上で、「我々自身が判断したことを示すため、早めに公表した方がよいと思った」と発表時期を早めたと強調した。
市は昨年8月にIR参入の意向がある企業・団体を受け付け、登録した19事業者のうち8事業者から提案された事業計画を精査していた。候補地はいずれも幕張新都心だった。
各事業者が提示した経済効果について、昨年の市議会12月定例会で「幕張新都心エリアで十分成立しうる」と答弁した熊谷市長。会見でこの点を問われると、「経済効果がある、イコールやるではない」と主張。一方で、幕張新都心の活性化のため「IRを含めて戦略を研究していく。IRを否定するわけにはいかない」と述べた。【小林多美子、秋丸生帆】
事業者は落胆、依存症家族の会は安堵
事業計画を提出した事業者には落胆の声が広がった。昨夏に千葉市内の企業9社とともにIR事業のための新会社を設立した同市美浜区の新日本建設の担当者は「青天のへきれき。なぜやめてしまうんだ」と驚いた。本格的な市場調査や海外のカジノ運営事業者との接触を予定していたといい、「これからだと思っていたのに」と嘆く。約8年前から誘致に向けて活動してきた同区のデザイン会社「フォルム」の松本有社長(67)は「スケジュールはもっと前から想定できた話だ。我々民間事業者や県ともっと早くから時間をかけて協議を重ねていれば(申請は)可能だったはずだ」と指摘する。
一方、NPO法人「全国ギャンブル依存症家族の会千葉」世話人の伊藤和世さん(54)は「見送りになって良かった」と安堵(あんど)した。ただ国のIR事業に変更はなく、「このままでは依存者が増える。国は教育の一環として学生のギャンブル依存症の予防に力を入れてほしい」と要望した。