秋の味覚、サンマの不漁が深刻化している。2019年の全国の水揚げ量が前年比66%減の4万517トンで、記録が残っている中で過去最低となった。サケも不漁となっている一方で、北海道や東北ではイワシやブリなどが思わぬ豊漁だという。食卓を彩る海の幸に異変が起きるのか。
全国さんま棒受網漁業協同組合の発表によると、サンマの水揚げ量のこれまでの記録で最低だったのは、1969年の約5万2000トンだった。00年から12年はほぼ20万トンを超える水準で推移したが、15年以降は低迷し、17年は8万トンを下回った。
一般社団法人、漁業情報サービスセンターのまとめによると、近年東北沖で漁獲量が減少しているのはサンマのほか、サケ、イカナゴなどが挙げられている。中国や台湾の漁船が公海での操業を活発化させている影響も懸念されているが、「太平洋の暖流、黒潮の勢いが強くこれまで届いていなかった東北や北海道にまで影響を与えるようになった。これによって冷たい海水を好むサンマが寄り付かなくなった影響もあるだろう」と同センター担当者は指摘する。
岩手県庁がまとめている「令和元年度秋さけ漁獲速報」では昨年12月20日現在、秋サケの漁獲量が前年度の20%程度にとどまっていると報告されている。原因は海水温の上昇だ。「サケの稚魚は春ごろに放流され、1カ月程度沿岸にとどまり十分な体力をつけてから北上している。しかし海水温が上昇したことで稚魚が北上するまでの期間が縮まり、体力が少ないまま稚魚が北上してしまう」と県の担当者。
それだけではない。成長したサケは3~4年かけて帰ってくるが、「海水温が高く、岸まで寄ってこれない」と前出の担当者。打開策として「海水温は下げられないので、高水温に耐えられたり、遊泳力の高いサケを人為的に生み出すか、養殖を視野に入れることが対策になる」と続ける。
一方で、前出の漁業情報サービスセンターのまとめでは、東北や北海道でウルメイワシ、ゴマサバ、ブリ、サワラなどの漁獲量が増えている。「海水温の上昇で、暖水系の魚が増加するようになった」と担当者。
岩手県の担当者も「ブリ、サワラ、イワシ、サバの漁獲量が増えてきている。現在はまだ流通や加工の仕組みが整っていないこともあり持て余す部分もあるが、今後も増加が続けばこれまでより安く食卓に提供できる可能性もあるだろう」と見通しを語る。
ただ、これらの魚の本来の漁場である太平洋側の千葉県や茨城県、日本海側の富山県などの漁獲量は、前年並みまたは低調だという。喜んでばかりはいられないようだ。