復興五輪「理念」に賛成9割 意外な結果 首長アンケート

東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島3県の計42市町村長に産経新聞が行ったアンケート。東京五輪・パラリンピックの理念とされる「復興五輪」に対して肯定的な意見が多く、特に「被災地への訪問機会」を望む声が多く寄せられた。背景には、被災地で記憶の風化が進んでいると感じる首長が多く、五輪を機に国内外の人々が被災地に足を運び、復興の現状を感じてもらいたいとの期待が強いようだ。
東京五輪・パラリンピックが「復興五輪」の看板を掲げていることについて、「賛成」「どちらかといえば賛成」との回答が約9割となった。
その理由として、楢葉町の松本幸英町長が「復興している姿を発信することで、世界に対し感謝を伝える機会となる」、岩泉町の中居健一町長も「国内外からの支援に感謝を伝える機会」と答えるなど、国内外から受けた支援への感謝を伝える機会とする意見が多かった。
「復興の現状を世界に発信できる」(遠藤雄幸川内村長)、「関心が薄れていく中、風化防止と復興前進が全国に発信できる」(佐藤光樹塩釜市長)-などと復興の現状を発信する場になるとの回答も多かった。
男女サッカー競技の会場となる宮城スタジアム(利府町)で使われる「復興芝生」の産地、山元町の齋藤俊夫町長は「新たな特産品が五輪会場で使用されることが報道されるなど、復興と良い結びつけになっている」。富岡町の宮本皓一町長は選手村で地元食材が使われるとし、「食材のおいしさや安全性をPRできる機会が設けられ被災地に配慮した運営」と評価した。
一方で、野田村の小田祐士村長は「被災地への配慮はそれなりに感じるが、東京中心で進んでいる」と言及。大槌町の平野公三町長は復興五輪に理解を示した上で、「復興工事が完了していない中での開催であり、住民の中での受け止め方に温度差があると思われる」と指摘した。利府町の熊谷大町長も意義はあるとした上で「資材の高騰や人員不足を招いている」と懸念を示した。
原発事故による避難指示が昨年初めて一部で解除された大熊町の吉田淳町長は「聖火リレーなどである程度現状を知ってもらえるとは思うが、こちらが十分に機会を生かすことができるかは未知数」と慎重な意見を述べた。
「復興五輪」を看板に掲げる東京五輪・パラリンピックでは、聖火リレーが福島からスタートして被災3県を巡り、宮城でサッカー、福島で野球・ソフトボールと、一部競技が被災地で開催される。こうしたあり方について、「良い」「どちらかといえば良い」との回答は9割を超えた。
「復興五輪の実現に向けて何が必要か」という設問では、亘理(わたり)町の山田周伸町長が「外国要人や五輪関係者が被災地を訪問する機会を増やす」▽普代村の柾屋伸夫村長が「訪日外国人を地方へ誘導するための取り組み」▽気仙沼市の菅原茂市長が「東京から被災地への観戦客の誘導」-とそれぞれ答えるなど、被災地に足を運んでもらう仕組み作りを訴える声が多かった。
葛尾村の篠木弘村長は、現状について「被災地に目を向けるだけの盛り上がりまでは感じられない」としながらも、「国や県が積極的にPRに努めるなど、世界中のたくさんの方々に被災地を訪れてもらえるような盛り上がりを期待したい」。陸前高田市の戸羽太市長も復興五輪について「被災地以外の意識を高めること」を課題に挙げた。
具体的な案では、東松島市の渥美巖東松島市長が「オリンピアンが被災地を訪れ、被災地の現状を知って、地域の方と交流していただきたい」と五輪選手との交流を提言。「プレイベントの開催など」(寺沢薫七ケ浜町長)▽「みんなが自分ごととして、東京五輪や関係することに関わること」(須田善明女川町長)-といった声のほか、「大会後の交流や取り組み」(亀山紘石巻市長)を重視する意見もあった。
福島の市町村長からは、「被災地の復興と放射線の正しい知識の発信」(立谷秀清相馬市長)、「復興が果たされていない部分をバランスよく正確に伝えた上で、風評を払拭するために、被災地は安全であり、復興に取り組んでいる前向きな姿を世界に発信すること」(吉田数博浪江町長)などと原発事故による負のイメージからの払拭を望む声も目立った。

42市町村の首長の大半が「復興五輪」の看板を肯定的に感じているのは意外な結果だった。これまで被災地で取材して、復興五輪という理念が分かりにくいという声をよく耳にしていたからだ。
聖火リレーが被災地を巡り、一部競技が宮城と福島で開催されるなど、被災地に配慮した部分が奏功したのだろう。「五輪を契機に被災地に来てほしい」との意見も多くみられ、今後、被災地の復興にもたらされる効果への期待がかなり高いと感じた。裏を返せば、復興は進んでいるものの、震災で加速した人口減や先の見えない原発事故からの再生など、被災地に残る課題の多さがかいま見えた。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で聖火リレー関連のイベントなどが縮小される見通しもある中で、復興五輪がどのように実現されるか注目したい。(大渡美咲)