新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めるため、欧米諸国では「都市封鎖(ロックダウン)」が実施されているが、日本の法律では、強制力を伴う措置はほぼできない。憲法にも「緊急事態条項」はない。これで「死のウイルス」の蔓延を防げるのか。「自粛破り」や「追跡調査拒否」などが指摘されるなか、もっと強い法律が必要ではないのか。元通産官僚で評論家の八幡和郎氏が緊急立法の必要性などを寄稿した。
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日本でも、欧米のような都市封鎖が可能かが論議されている。安倍晋三首相は1日の参院予算委員会で、「さまざまな要請をさせていただくことになるかもしれないが、フランスなどで行っているものとは性格が違う」と、強制力を伴うことは難しい認識を示した。
しかし、現状は甘くない。
欧米でも「爆発的患者増大(オーバーシュート)」が発生して、医療体制が崩壊して手が付けられなくなった。それでも、欧州は隣国の援助が期待でき、米国は地方分権で地域が自立している。一方、日本は国家体制崩壊になりかねない。
現在の日本国憲法は「緊急事態法制」を想定していない。
だが、できないわけでない。逆に言えば、憲法の縛りがないため、かえって危険なくらいだ。非常時では、思い切った法改正「緊急立法」をすればいいのである。
将来、緊急の法律や政令、具体的な措置が、裁判所から違憲といわれるかもしれないが、日本では法令の施行を事前に阻止されるわけでない。明らかに違憲でなければ、この際は仕方ないし、国民も理解するだろう。
現場ベースでの対応でも知恵を出すべきだ。
さいたまスーパーアリーナ(さいたま市)で先月22日、格闘技イベント「K-1 WORLD GP」が強行された。私は「警官を大量配置し、関係者や観客に職務質問を繰り返して入場に支障を出させて中止に追い込めばいい」と提案したが、やろうと思えばいくらでも方法はある。
日本人は天下泰平に甘えてきた。昨日も、マスク2枚の郵送配布について議論があった。
中国や欧州、韓国、台湾では、住民登録制度(=マイナンバー制度)が完備され、カード所持は義務だ。日本では義務付けられておらず、確実できめ細かい配給制度は無理なのだ。迅速に配布しようとすれば粗いやり方しかないのである。
財政出動も、米国やドイツのように健全財政なら思い切って実行できる。ドイツの政府債務はGDP(国民総生産)の0・6倍だが、日本は2・3倍である。欧州諸国は、増税や社会福祉切り下げ覚悟で清水の舞台から飛び降りた。それでも、ドイツ中部ヘッセン州のトーマス・シェーファー財務相が悲観して自殺したくらいだ。
日本は社会全体のIT化が遅れており、韓国のように新学期の授業をネットで開始することもできない。「マイナンバー」「財政規律」「IT化」のどれをとっても、「弱者保護」を口実に甘えてきた報いである。
ここは黒船到来時の火事場のバカ力を出すつもりで、「令和維新」を実現しないと、この国は救われない。