日本も「病院船」現実味? 政府、補正予算で調査費計上も…識者「現状のまま導入強行すれば…海自が崩壊しかねない」

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、日本でも「病院船」の導入が現実味を帯びてきた。政府が7日にまとめる緊急経済対策で、本格的導入の検討に入るとの方針を打ち出し、裏付けとなる2020年度補正予算で「調査費」を計上する。いくつかの障壁もありそうだが、決定すれば海上自衛隊が運用することになるとみられる。
「病院船の配備は、加速度的に検討する必要がある」
加藤勝信厚労相は2月12日の衆院予算委員会でこう語っていた。河野太郎防衛相も同調し、両省に内閣官房や内閣府、国交省も加わり、水面下で意見交換を進めてきた。
病院船は、患者の診察や治療の機能を持つ船舶。手術室やICU(集中治療室)、入院設備も備えている。米国やフランス、ロシア、中国などが保有している。
今回の新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)では、米海軍が病院船「コンフォート」を東海岸のニューヨークに、同「マーシー」を西海岸のロサンゼルスに派遣した。ともに全長272メートルの巨大な船体で、病床は約1000床。「海上の大学病院」というイメージだ。
日本でも、東日本大震災(2011年)後に、「災害時多目的船」として導入が取り沙汰されたが、1隻で数百億円とされる建造費などがネックとなり、しぼんだ。
今回、緊急経済対策の一環として再浮上した。首都直下地震や南海トラフ地震などの大規模災害が発生した際などに活用が期待される。果たして、実現できるのか。
軍事ジャーナリストで評論家の潮匡人氏は「あった方がいいが、日本には厳しい財政事情がある。新規建造でも既存船の改修でも簡単ではないだろう。海自は深刻な人手不足で、訓練も運用も難しく、現状のままで導入を強行すれば、海自が崩壊しかねない。それでも景気浮揚策として導入するというなら、人員と予算を十分確保して多用途にすることが不可欠だろう」と語っている。