新型コロナ感染拡大で治安悪化懸念 警視庁、大量応援投入

新型コロナウイルスの感染が全国の警察官に広がりをみせ、緊急事態宣言が出された首都・東京でも感染が確認された。今後も感染が広がり、最前線で犯罪と対峙(たいじ)する警察署の機能が低下すれば、犯罪集団などの犯行を防げず、治安の悪化を招きかねない。警視庁は本部から大量の応援部隊を派遣するなどしており、幹部は「警察力が落ちることはない」としている。
私鉄やJRが乗り入れ、巨大繁華街を抱える警視庁のある大規模署では、緊急事態宣言が出された直後の8日の当直時間帯は、逮捕者が「ゼロ」だった。
普段は夜通し電話が鳴りやまず、慌ただしく捜査員らが行きかう署内は閑散としていた。副署長は「事件はストップ状態。こんなことは着任以来初めてのことだよ」と苦笑する。
警視庁によると、新型コロナ騒動で外出自粛が叫ばれ、人々の往来が減少するにつれてトラブル自体が目減りしているとみられ、3月の110番通報は前年同月比で約17%抑えられた。交通渋滞も23区内の道路では15%減少し、交通事故件数も抑えられている。
こうした状況は、緊急事態宣言でさらに加速するとみられ、体感的な治安は向上するようにみえる。ただ、警視庁の幹部は「自宅待機の長期化によるストレスや景気低迷に伴う不安など、人の心が乱れる要素が数多い。今後、治安が悪化に転じる可能性は十分にある」と懸念を漏らす。
警察官の感染が広がれば、警察署の機能低下も懸念される。
警視庁では、これまでに赤坂、町田、武蔵野、昭島の4署などで警察官の感染が確認された。警察官の感染は全国でも確認され、愛知県警では剣道の練習でクラスター(感染者集団)が発生。20人以上の感染が確認され、全職員約1万4千人のうち接触した可能性のある警察官ら約250人が自宅待機となった。
兵庫県警の神戸西署でも50代の警視の感染が判明。署長も含め、全署員の3分の1にあたる約100人が自宅待機となった。
治安維持に向けて警視庁が傾注するのが、最前線で対応にあたる署の機能確保だ。赤坂署では、感染確認の署員に加え、接触が疑われる65人に自宅待機措置を取ったが、本部などから100人を超える応援部隊を派遣した。
感染者が出た署の管轄地域では、詐欺や強盗などの目的で資産状況を確認する予兆電話(アポ電)が増えるなど、犯罪のターゲットになりかねないという危惧がある。新型コロナ不安に乗じ「ウイルスに効くアメをあげる」などと子供への不審な声かけの事案も確認されている。
応援部隊はATM(現金自動預払機)付近や住宅街でのパトロールに重点を置き、「見せる警備」を推進するという。
今後も警察官の感染は広がる可能性があり、警視庁は本部などから応援の供給を続け、対応にあたる。幹部は「住民に不安を与えないように警察の力は落とさない」と話している。