福岡市東区の分譲マンションで傾きが生じ、住民が依頼した専門家調査で基礎となるくいが固い地盤(支持層)に到達していないとの結果が出た問題で、施工JV(共同企業体)の一社である若築建設(本社・東京)もくいの未到達を確認し、住民に謝罪の意向を示していることが、関係者への取材で判明した。マンションを販売した同社とJR九州、福岡綜合開発(現・福岡商事)のJVは、これまで一貫して「構造に問題はない」と主張していた。
マンションは7階建て60戸で、1995年に分譲開始。当初から外壁のひび割れなどの不具合が多発し、JV側は住民側の指摘を受け2017年に傾きは認めた。しかし、傾きは地震の影響などと主張し、構造上の問題はないとして施工の不備は否定してきた。
20年3~4月、住民の依頼を受けた日本建築検査研究所(東京)がボーリング調査したところ、2本の基礎くいが固い地盤にそれぞれ7・3メートルと4・1メートル長さが足りなかった。住民によると、これを受けて若築建設も4月下旬に同様の調査をし、不足する長さに0・1メートルの違いはあったがほぼ同様の結果が出た。九州支店幹部が27日にマンションを訪れ、結果を説明した。
住民によると、支店幹部はその説明の際、五百蔵良平社長が謝罪のために訪問したい意向があることを伝えたという。住民側は29日の管理組合の理事会で社長の訪問を受け入れる方向で意見がまとまった。同社は毎日新聞の取材に「施工会社としての責任を重く受け止め、管理組合と協議を進めて誠実に対応する」とコメントしている。
住民側は「JR九州のブランド力に安心を感じ購入した人が多いが、JR九州はほとんど住民に対応していない」として、JV3社の釈明がない限りその後の交渉には応じない方針。住民が依頼した日本建築検査研究所の調査では、施工当初から傾きを認識しながら工事をした痕跡もあるといい、住民は引き続き施工当時の経緯を追及したいとしている。【平塚雄太】