新型コロナウイルスの緊急事態宣言が全面解除され、再流行の阻止と経済復活の両立が課題となるなか、政府の諮問委員会メンバーの経済学者が「国内パスポート」の発行を提言した。県境をまたぐ移動について安全性を担保する策だというが、江戸時代の関所か、リアル『翔んで埼玉』かと波紋を広げている。
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仰天アイデアを披露したのは、コロナへの基本的対処方針を検討する諮問委メンバーに選ばれた慶応義塾大学の竹森俊平教授=顔写真。20日の衆院予算委員会に参考人として出席し、新型コロナウイルスで観光ビジネスが打撃を受けているとしたうえで、「私だって温泉に行きたくてしようがないわけですから、需要はあると思う」と述べた。
県をまたぐ移動に伴う安全性を担保する手法について竹森氏は「まず国内パスポート、手形みたいなものをどういう風に作るかというのが1つ」と提案、「どうやったら県をまたいで移ることができるか、緊急を事態宣言を解除すればそれでいいのか、あるいは駅にサーモグラフィーを置けばいいのか」という基準を模索する重要性を説いた。
この構想に対し、ネット上では「関所を作るってこと?」との声や、東京と埼玉の都県境に関所があり、埼玉県民は通行手形がないと東京に入れないという設定のギャグ漫画『翔んで埼玉』を引き合いに出す反応が相次いだ。
国内パスポートを作る場合、鉄道駅を関所にすることは可能なのか。鉄道ジャーナリストの梅原淳氏は「具体的な手法が分からない部分もあるが、乗客の手荷物検査導入もできないのにパスポート確認の機能も担えるかは疑問だ。また、例えば小田急線は各駅ごとに東京都-神奈川県間を行き来する地点があり、現実的な施策とは考えにくい」と指摘する。
経済ジャーナリストの荻原博子氏は「通行に伴うパスポートを申請する人が役所に殺到すれば『3密』は避けられない。給付金やマスクも行き渡っていない状況でパスポートまで発行しようとするのは無理がある」と語る。
海外では、新型コロナウイルス感染症から回復し、職場に復帰する際や旅行をする際の「免疫パスポート」をめぐる議論があり、試験的に実施されている国もある。
ただ、世界保健機関(WHO)は4月24日付の文書で「新型コロナウイルスから回復して抗体を持っている人々が再感染しない根拠はない」とし、パスポート導入によって「2回目の感染に免疫があると思い込んだ人が公衆衛生上の助言を無視してしまう恐れがあり、継続的な感染リスクを高める」と警告している。
実現まではかなりの難関がありそうだ。