学校再開も「第2波」警戒 学習格差解消難しく

新型コロナウイルスに伴う緊急事態宣言の全面解除から1週間となった1日、首都圏を中心に多くの学校が再開した。学習の遅れを取り戻す動きが本格化した矢先、北九州市の小学校でクラスター(感染者集団)の発生が疑われ、再休校を余儀なくされた。一方、感染者ゼロの岩手県など授業時間をほぼ確保できている地域もあり、学習の進み具合は列島でまだら模様を描く。文部科学省は学校現場の正常化に向け、厳しいかじ取りを迫られている。(福田涼太郎、玉崎栄次)
北九州市では5月28日以降、児童生徒の感染判明が相次ぎ、4つの市立小中学校が休校に追い込まれた。
これを受け、文科省は今月1日、日本PTA全国協議会などを通じて、保護者側に児童生徒の健康観察の徹底を要請。5月には全国の教育委員会に通知した学校再開に向けたマニュアルで、校舎に入る前の検温などを提言したが、北九州市教委の担当者は「無症状の子供の捕捉は難しい」と健康管理の課題を口にした。
4月には富山市立小でも児童ら5人の感染が確認されたが、同省などは「校外で感染した可能性が高い」としてクラスター発生を否定。北九州市についても、厚生労働省は「現時点ではクラスターと判断していない」との認識を示した。
だが、文科省幹部は「恐れていたことが起こった」と危機感を抱く。学校現場の感染拡大で休校が相次げば、同省が堅持する「原則再開」の方針に影響を与えかねないからだ。
事実、各地の学校現場には不安が広がった。1日に3カ月ぶりに学校再開した横浜市は長期休業の短縮などで学習の遅れを解消する計画だが、「学校で感染者が出れば、その学校の休校もあり得る」(市教委)。一方、岩手県では県立校が4月以降もほぼ平常通りに授業を続けており、「目立った遅れはない」(県教委)。感染の第2波が想定される中、北九州のケースは地域間の学習格差解消の難しさを浮き彫りにした。
文科省は今年度中に消化できない学習内容を次の学年に持ち越す特例措置や、大学や高校の入試で出題範囲を限定するなど受験生が不利益を被らない工夫を要請しており、今後もその姿勢を維持する方針だ。文科省幹部は「(児童生徒の感染は)予想できたことでもあり、冷静に対応してほしい」と呼びかけるが、感染リスク回避と学習機会の確保を両立させる抜本策を打ち出しかねているのが実情だ。