寝たきり容疑者に異例の捜査 京アニ逮捕から1週間

京都アニメーション放火殺人事件で、殺人などの疑いで逮捕された青葉真司容疑者(42)の弁護人が3日、京都地裁に勾留理由の開示を請求し、あわせて勾留決定に対する準抗告を退けた先月29日の地裁決定を不服として最高裁に特別抗告したことを明らかにした。自力で歩行や食事ができず、車いすに乗るのも難しい状態の容疑者を逮捕してから3日で1週間。責任能力の有無を調べるための鑑定留置も予想される中、京都府警は真相究明と容疑者の体調管理を求められる異例の捜査の難しさに直面している。
「少なくとも3、4人の社員がいた。ガソリンを散布した後、自分の右腕に火がついたので、外に出た」-。逮捕翌日の先月28日に青葉容疑者が勾留先の大阪拘置所で供述した犯行当日の様子だ。
ただ、事件から約10カ月が経過しており、捜査幹部が「頭の整理ができていないかもしれない」と話すように、記憶があいまいな部分もある。府警は、体調に配慮した取り調べを行いつつ、拘置所で医師によるやけどの治療やリハビリも継続するという。
青葉容疑者の弁護人に選任された遠山大輔弁護士は勾留をめぐる対応策を次々と講じており、3日は勾留理由の開示請求と最高裁への特別抗告を行ったと説明した。開示請求は2日付。勾留理由の開示は勾留を認めた理由を裁判官が公開の法廷で説明する手続きで、容疑者本人が意見を述べることもできるが、地裁によると、青葉容疑者の出廷の見通しは立っていない。
刑事訴訟法は、罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由や、証拠隠滅や逃亡の恐れがある場合、容疑者を逮捕できると定めている。府警側は「具体的に申し上げられないが、こういう状況でも逃亡や罪証隠滅の恐れがあると判断した」と逮捕の必要性を強調。ある捜査幹部は「逮捕しない状態では、第三者と連絡を取り合って供述が汚染される可能性がある」と、その理由を明かす。一方で、青葉容疑者への負担を減らすためとして、府警と地検は、5月27日の逮捕当日に本来は最大で72時間かける勾留決定までの手続きを1日で終了させるなど異例の対応を取った。
殺人などの罪で起訴され、裁判員裁判の対象事件となれば、取り調べ時の任意性の確保や青葉容疑者の責任能力が争点となる。捜査関係者によると、昨年11月の任意での聴取も含め、青葉容疑者の取り調べは全て録音、録画している。最初の勾留期限を5日に迎えるが、地検は勾留延長を申請した上で、責任能力を調べるため地裁に鑑定留置を請求するとみられる。公判前整理手続きも含めると、公判開始まではまだ時間がかかりそうだ。