新型コロナウイルスの感染再拡大の兆候を警告するため、東京都が2日夜に発動した「東京アラート」。小池百合子知事は3日、夜の繁華街が感染源とみられる陽性者の増加傾向を踏まえ「夜の外出は控えてほしい」と改めて協力を求めた。ただ、外出自粛が緩和される中での発動に、ようやく営業を再開した都内の飲食店関係者や利用客らからは不安や困惑の声も聞かれる。
■生活のため営業
「さらに状況は厳しくなると思うが、仕方ない」。新宿区歌舞伎町にある居酒屋で店長を務める男性(40)は、アラートの発動に肩を落とした。
4月の緊急事態宣言以降、歌舞伎町では人出が激減した。5月25日に宣言が解除されると徐々に店舗が開き始め、アラートが発動された今月2日夜には多くの店が夜間も店を営業。元の姿を取り戻しつつある矢先だった。
コロナ禍で客足は以前と比べて9割減ったという男性は「人通りは確かに戻ってはきているが、お客さんはまださっぱり。いつまでこんな状況が続くのか」と、ため息をついた。
歌舞伎町にあるガールズバーの店舗責任者の男性(31)は「外を歩く人は以前より増えたが、お客さんが増えていたわけではないので苦しい」と話す。アラート発動の背景にはホストクラブやガールズバーといった「夜の店」での感染者増加があるとされるが「こっちも生活がある。やることをやるしかない」と話した。
4月に開業し、自粛期間中も営業していた別のガールズバーでアルバイトする女性(22)も「(アラートで)お客さんは気持ち的に来づらくなると思う。出勤しても、お給料が出ないと交通費だけがかかってしまう」とこぼした。
■第2波来れば働けず
感染防止の必要性に理解を示す一方、再開したばかりの経済活動が再び冷え込むことへの不安は根強い。
渋谷区にあるキャバクラに勤める40代の男性は「休業要請の緩和で飲食店の営業時間が延長され、2軒目として利用してくれるお客さんも出てきたのに、これでまた人が減ってしまうのでは」と危機感をあらわにする。
勤め先の同区内のガールズバーが1カ月以上休業し、ようやく先週から働き始めた20代の女性は「店に来るお客さんはまだまだ少ないが、感染第2波が来てしまうとまた働けなくなる」と警戒心を強めた。
サラリーマンが行き交う港区の新橋駅近くにある焼き鳥店の店主(63)は、緊急事態宣言を受けて営業時間を短縮し、通常営業に戻り始めたばかり。「今後また自粛要請が出たらどうなるのか。期待を裏切られた」とし、「(休業要請した企業に対する都の)協力金やコロナ対策の融資を申請しているが、音沙汰がない。もう限界だ」と訴えた。
■「はしご外された気分」
再開し始めた飲食店の利用者にも戸惑いが広がる。
新橋駅前の居酒屋で酒を飲んでいた千葉県船橋市の男性会社員(60)は「(アラート発動は)そうなると思っていたが、インフルエンザの方が感染者が多い。ワクチンがまだないから不安なのは分かるが、騒ぎすぎでは」。神奈川県藤沢市の男性会社員(47)は「会社では10人以上集まる飲み会や会議を禁止しており、以前よりコミュニケーションが取りづらくなっているように感じる」と話し、「アラートは仕方がないけど、もどかしい」と打ち明けた。
仕事帰りに友人と久々に酒を飲もうと歌舞伎町を訪れた男性会社員(28)は「まだ(自粛モードが)解除された感もないのにアラートが出て、はしごを外された気分」とこぼした。