愛知県の大村秀章知事に対する解職請求(リコール)運動について、キッパリと賛意を示した大阪府の吉村洋文知事。2大都市のトップ同士がいがみあう前代未聞の騒動が勃発したが、その背景には大阪と名古屋の深い因縁があった。
戦後の大阪は重化学工業や商業を武器に、東京に次ぐナンバー2の都市として発展を続けてきた。
一方の名古屋は周辺にトヨタ自動車というビッグカンパニーがあるものの、経済面ではなかなか大阪に追いつけなかった。
高度成長期を活況に沸く大阪で過ごした70代男性が振り返る。
「1970年に大阪は万国博覧会を開催し、6400万人が入場したんや。愛知は35年も遅れて2005年に万博をやったけど2000万人程度しか入場せんかった。日本人の記憶に大阪万博は残っていても、愛知万博はあんまり記憶にないがな」
1987年に開催されたマイケル・ジャクソンの初来日コンサートでは、横浜や大阪、西宮で公演されながら、名古屋公演はなし。
1992年には、運行を開始した東海道新幹線「のぞみ」が名古屋駅を通過する「名古屋飛ばし」が大きく報じられた。
だが、2015年度に両者の関係に決定的な転機が訪れた。この年度に国内総生産(GDP)の都道府県版である「県内総生産」で愛知が初めて大阪を抜いて、東京に次ぐナンバー2に躍り出たのだ。大阪在住の経済学者である宮本勝浩・関西大学名誉教授が指摘する。
「この時期はトヨタの純利益が2兆円を超える大盛況で、トヨタに引っ張られて愛知県内の経済が好況でした。一方の大阪は松下電器(パナソニック)やシャープといった家電メーカーが不調に陥って愛知の後塵を拝した。リーディング産業がなくなったことも大阪には痛手でした」
この逆転以降、大阪と名古屋に新たな確執が生まれたと宮本氏が続ける。
「名古屋人に『オレたちこそがナンバー2だ』という意識が芽生えました。名古屋はリニア新幹線も東京と結ばれるし、名古屋空港に拠点を持つ三菱航空機が軌道に乗れば、さらなる躍進が望めます。
『上り調子のオレたちは大阪より上だ』という勝利者意識が、大阪にモノ申すという大村知事の上から目線につながったのではないでしょうか」
※週刊ポスト2020年6月26日号