サッカー関東1部リーグ「栃木シティフットボールクラブ」の親会社が栃木市岩舟総合運動公園に建設中のサッカースタジアムを巡り、同市が完成後の固定資産税と公園使用料を最大10年間全額免除する内容の覚書を交わしていた。公益性を理由に市長裁量で決めたが、市議会からは関連条例の趣旨から逸脱するとの指摘があり、市政の新たな火種となっている。
スタジアムは、日本理化工業所(東京都品川区)が市から設置許可(最大10年間)を受け、今年4月から公園多目的グラウンド約2・8ヘクタールに建設している。建設費は約14億円。
覚書の存在は開会中の6月定例市議会の審議で明らかになった。市によると、今年3月に締結し、市側が固定資産税と年間約1300万円の公園使用料を全額減免する一方、許可期限後は同社が原状回復するかスタジアムを市に譲渡することなどを定めた。同市は建設事業に公益性があると判断し、市税条例や公園条例の減免規定を適用したという。
しかし、同市の市税条例では、減免措置は災害や貧困などにより納税が難しい場合に限り、非営利で公共性の高い医療機関に対し例外的に認めている。スタジアムは入場料収入を見込む営業利用で、議員から減免適用の可否を問われた同市の税務部局は「ふさわしくない」との見方を示した。誘致企業への助成でも減免はしておらず、賦課額相当分を補助金として交付しているという。
また、同市財産条例では、行政財産の民間への無償貸し付けは原則として認められない。同公園も行政財産だが、同市は「有償で貸し付けした上で、全額減免するので、無償貸し付けではない」と議会に説明した。
一部議員は「詭弁(きべん)。条例適用が恣意(しい)的で、法的根拠を欠く」「税の公平、公正性を損なう」として減免の見直しを求めた。同市は「市民のスポーツ観戦の機会が得られ、スタジアムの無料開放の意向もあるという。市のPR効果や地域経済への貢献も期待でき、公益性が高い」と減免の正しさを主張している。【太田穣】