イージス・アショア計画中断 肝心のレーダーにも問題あり

【経済ニュース深読み】

「閣議決定された事業を中断するのは、非常に勇気の要ること。それをやった河野太郎防衛相の英断を評価したい」

ミサイル防衛に携わっている防衛商社幹部が、率直にこう漏らす。

先週、河野防衛相が陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」に関し、「配備計画を停止する」と発表。自民党国防族、防衛省幹部、防衛産業関係者に衝撃を与えた。防衛省が、秋田県秋田市と山口県萩市に配備を計画。2019年4月、1399億円で2基分の本体購入費の一部を米国と契約するなど、着々と準備を進めていた。

見直しの最大の理由は本体の不具合。ミサイル発射後に切り離されるブースターを、住宅地ではなく基地内や海上に落下させるためには、改修のため、約12年の時間と2000億円以上の経費が必要となった。河野防衛相は「間違っているものは、やめなければならない」と、言い切った。

もともとイージス・アショアは、17年12月の閣議決定の時から反対論が多かった。「イージス」とはギリシャ神話の「邪気をはらう盾」で、それに陸上を意味する「アショア」に掛け合わせた。ただ、「神の盾に穴」という酷評もなされ、最大の理由が、レーダーの性能だった。防衛省関係者が、次のように指摘する。

「選定されたレーダーは開発中のロッキード・マーチン社製LMSSR。完成してもミサイル実験を日本の責任において行わねばならず、そのための費用が約1000億円と高くつくうえ、24年以降、米海軍が配備するレイセオン社製SPY―6との相互互換性がない」

そもそも、肝心のレーダーに問題があったのだから、配備は最初から無理筋だったのだ。

また、費用の問題もある。1基800億円から始まった取得費は、2基で2474億円と膨らみ、30年間の維持・運営費を含めて4459億円。それに先述の実験費、造成費や建屋、1発30億円のミサイル取得費……。さらに2000億円もの改修費となれば1兆円を超えるのは確実で、導入時、「約800億円で最新鋭イージス艦より安い」という訴えが、まるでウソだったことになる。加えてBMD(弾道ミサイル防衛)対応のイージス・アショアは、「時代に即していない」(防衛専門家)という指摘もある。

「今、BMDだけではなく、巡航ミサイルや極超音速滑空弾など多種多様な備えが必要になっている。さらに10年後、20年後を考えると、北朝鮮以外の備えも要る。迎撃対象を広範囲にしたIAMD(統合防空システム)の方がふさわしい」(前出の防衛専門家)

もちろん防衛の装備やシステムを巡っては、いろんな意見があり、どれが正解とはいえないだろうが、撤退も重要な選択肢のひとつ。退かないのが行政の伝統だけに英断だが、防衛省にはもうひとつの懸案の辺野古基地問題がある。地元・沖縄の猛反発に膨れ上がる総工費。この見直しを考えてもいい。

(伊藤博敏/ジャーナリスト)