気象庁「命を守る行動を」 熊本、鹿児島両県に初の大雨特別警報

梅雨前線の影響で九州南部は4日、記録的な大雨に見舞われた。気象庁は同日午前4時50分、熊本県と鹿児島県に大雨特別警報を出した。大雨特別警報が出るのは2019年10月の台風19号以来で、両県への発令は初。気象庁は災害が発生している可能性が高いとして「命を守る最善の行動を」と呼びかけている。
気象庁によると、4日午前9時現在で特別警報の対象になっているのは熊本県の天草・芦北地方、球磨(くま)地方、八代市と、鹿児島県の出水・伊佐地方。停滞する梅雨前線に暖かく湿った空気が流れ込み、大気の状態が不安定になったという。午前7時半までの6時間の降水量が熊本県芦北町で300ミリを超えるなど、同県の各地で観測史上1位を記録した。
気象庁は4日午前6時から記者会見し、中本能久予報課長は「河川や崖から少しでも離れた頑丈な建物の上の階などに避難してほしい。少しでも命が助かる可能性の高い行動を取ることが重要だ」と話した。
熊本県では県南部を中心に土砂崩れや住宅の浸水が相次ぎ、球磨村などで球磨川が氾濫した。
同県津奈木町によると、4日午前5時40分ごろ、同町福浜の平国地区の住民から「家が土砂崩れで流された」と通報があった。少なくとも住宅1棟が全壊し、この家に住む80代夫婦と連絡が取れていないという。このうち1人が救出されたとの情報もある。
水俣芦北広域行政事務組合消防本部(同県水俣市)によると、4日午前3時40分ごろ、同県芦北町女島地区で土砂崩れが発生し、住民から「住宅に1人生き埋めになっている」と119番があった。就寝中だった80代女性が自宅に流れ込んだ土砂に巻き込まれたが、消防隊員が救出して病院に搬送した。女性は意識があり、会話ができる状態だったという。
このほか、県警芦北署などによると、芦北町内では土砂崩れの発生に関する通報が20件以上寄せられた。
国土交通省八代河川国道事務所(同県八代市)によると、県南部を流れる球磨川の球磨村小川合流点で4日午前5時20分ごろ、水位が11.11メートル(氾濫危険水位8.7メートル)に達し氾濫を確認した。人吉市内でも氾濫しているという。熊本県は貯水容量を超える恐れがあるとして球磨川上流の県営市房ダム(水上村)の緊急放流を予定していたが、雨が弱まるとみて見合わせた。【森健太郎、黒川晋史】