住宅突き刺す流木、老人ホームは高さ2mまで泥…被災地ルポ

轟音
( ごうおん ) とともに施設内に流れ込んだ濁流が、足腰の弱った高齢者たちを容赦なく襲った。14人の心肺停止が確認された熊本県球磨村の特別養護老人ホーム「千寿園」。必死で入所者を避難させようとした職員や住民らは、全員を無事に助けられなかったことを悔やんだ。

5日、被害が集中した熊本県球磨村に入った。美しい田園が広がるのどかな風景は一変し、各地に被害の爪痕が残っていた。
同日朝、同県人吉市から車で村を目指した。村内に入り、しばらく国道を走っていると、冠水した道路に突き当たった。そこでは、警察や自衛隊によるボートでの救助活動が続いていた。
助け出された近くの自営業の男性(52)は「家族4人で車中泊し、1人1個のおにぎりでしのいだ。とにかく休みたい」と疲れ切った表情で語った。
辺り一面は泥水に覆われ、道路と田畑の境目は分からない。電柱は何本も倒れ、電線は垂れ下がっている。押しつぶされた家屋や、2階部分に突き刺さったままの流木もあった。住民の了解を得て入った民家の中は、畳が浮き上がり、冷蔵庫は押し倒されていた。強い濁流に襲われたことが想像できた。
車を置いて山手の道を30分ほど歩くと、入所者14人が心肺停止となった特別養護老人ホーム「千寿園」が見えた。外壁には高さ2メートル以上まで泥がついた跡が残り、施設内は椅子が散乱していた。
熊本県では、今後も断続的な降雨が予想されている。被害が拡大しないことを願わずにはいられなかった。(峰啓)