電脳女将・千鶴さん「早く帰ってきて」 声優が安否気遣う 湯布院の旅館家族不明

九州豪雨で被災した大分県由布市湯布院町の4人家族が経営していた老舗旅館の公式キャラクターの声優を務める女性が、家族を襲った突然の災難に心を痛めている。渡辺登志美さん(81)ら3世代4人は7日深夜、避難中に車ごと濁流にのまれ、登志美さんは遺体で見つかったが、3人の行方は今も分かっていない。
行方不明になっているのは、登志美さんの娘の由美さん(51)と娘の夫の知己さん(54)、孫の健太さん(28)。
一家が同町の湯平温泉で営む旅館「つるや隠宅(いんたく)」のキャラクター「電脳女将(おかみ)・千鶴」は、着物を着たアニメ調の女性で、インターネットやアニメに詳しい健太さんが2016年4月の熊本地震後に若い世代の誘客を目指し、同年12月に制作した。健太さんは旅館のホームページやツイッターに「電脳女将・千鶴」を登場させ、自分たちの旅館の宿泊プランだけでなく、県内の観光情報などを発信してきた。
「千鶴」は、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を通じてアニメファンなどの間で話題になり、スマホゲームとのコラボも実現。タオルやキーホルダーなどのグッズも誕生し、ファンからは「千鶴さん」の愛称で親しまれるようになった。
19年12月、数多くのアニメやゲームで主役級を張る大分県出身の種﨑敦美さんが声優に起用されると、人気に拍車がかかった。種﨑さんの声で千鶴が大分弁で自己紹介する動画も配信され、アニメファンらに広く浸透した。
種﨑さんは12日、渡辺さん一家に向けて自身のツイッターでコメント。「大分弁でセリフを喋(しゃべ)る、大分県と深く関わる仕事をするのが夢の一つでした。夢を叶(かな)えていただきました」と感謝し、被災について「ショックで悲しくて信じられなくて何をしていても頭をよぎる」と悲しみを吐露。「千鶴さんが旅館で待っています。早く帰ってきてあげてください」といまだ行方が分からない3人に呼びかけている。
ツイートは約1万1000件(15日午前9時現在)リツイートされ、ファンや宿泊したことがある客らによる無事を祈る書き込みであふれている。種﨑さんは「今もいろんな場所で大変な思いをされている皆様に早く平穏な日々が戻りますように」と被災地全体への思いも書いている。【辻本知大】