深夜の公園を訪れた男子大学生。目的はネット上で見知らぬ相手と約束した大麻の購入だった。犯罪に手を染める後ろめたさと違法薬物への興味をともに抱きながら、取引相手に金を渡すと-。6月、大阪府警が強盗致傷容疑で逮捕した17~18歳の少年5人は、SNS(会員制交流サイト)に薬物の密売をにおわせる文言を投稿。応じた相手に暴行を加えて現金を奪っていた。「警察には通報されないと思った」と少年たち。しかし、世の中はそんなに甘くなかった。
血まみれに…
「お酒より楽しくなるものいりませんか」
大阪府内に住む男子大学生(23)は昨年9月、SNS上でこんな書き込みを見つけた。違法薬物の売買を持ち掛けていると分かり、興味本位でメッセージを送信。何通かやりとりし、数日後に大麻5グラムを買う約束をした。
同月23日午前0時。大学生が指定された同府東大阪市内の公園に到着すると、若い男2人の姿があった。約束通り3万円を手渡し、大麻を受け取ろうとすると、1人がスプレーを顔に噴射してきた。
目に激痛が走り、なんとか逃げようとしたが、物陰に隠れていた別の若い男3人も加勢。鉄パイプで頭などを複数回殴りつけられ、血まみれになった大学生は「財布を渡すからやめてくれ」と懇願し、現金約5万円が入った財布を男らに差し出した。
“逃げ”と“叩き”
発生から約9カ月が経過した今年6月、府警は強盗致傷容疑で、17歳と18歳の男子高校生ら少年5人を逮捕。実際には販売する大麻は持っていなかったとみられる。
府警によると、犯行にあたり少年らが参考にしたのは、SNS上に投稿されていた「逃げ」と「叩(たた)き」という手口だった。SNSで大麻の密売人や購入希望者に接触し、大麻や現金を受け取ってすぐ逃げるのが「逃げ」、相手に暴行を加えて現金や大麻を奪うのが「叩き」とされる。
今回、少年らは「叩き」の手口を選んだ。大麻を買おうとした方も犯罪に手を染めるつもりだったため、「被害にあっても簡単には警察に通報されないと思った」と、その理由を説明したという。
実際、大学生は血まみれになりながらも「後ろめたさがあった」ことから、すぐに通報しなかった。しかし、同居する母親から警察に行くよう諭され、事件の2日後、1人で最寄りの警察署を訪れて被害を申告。府警は防犯カメラの映像などをもとに捜査を進め、少年らを特定した。
被害者はどうなるのか
相手の弱みを作り出し、警察に相談できないようにして現金を奪うという犯行は、古くから「美人局(つつもたせ)」などでみられる手口だ。最近は今回と同じような事件も起きている。
府警平野署は6月、恐喝未遂容疑で15~16歳の少年3人を逮捕した。1人が知人から紹介された高校生を公園に呼び出し、大麻と称した葉っぱを売った後、残りの2人が見知らぬふりをして登場。「大麻ちゃうんか。警察に言うぞ」と脅し、通報しない代わりに現金を要求するという手口だった。このときも最終的に通報され、恐喝は未遂に終わった。
一方、こうした事件の被害者となった人たちは罪に問われないのか。
大学生のケースは、大麻を買う約束をして現場まで行ったが、少年らが大麻を用意しておらず、実際に大麻を購入するのは不可能な状況だった点を考慮され、立件は見送られた。恐喝未遂の被害者は実際に葉っぱを購入しているが、実物は見つかっておらず、大麻を購入したか裏付けられないという。
とはいえ、捜査関係者は「場合によっては立件されることも大いにある」と指摘する。「通報したら自分も逮捕されるのでは」という心理は的外れではない。ただ、そもそも悪事に手を出さなければ、そんな心配などする必要は、ない。