新型コロナウイルスの終息に欠かせないワクチン開発に新たな動きだ。英オックスフォード大のチームと中国の軍事科学院医療部門のチームがそれぞれ、ワクチンを接種した人に感染を防ぐ抗体ができ、有望だとする臨床試験(治験)の中間結果を発表した。日本政府もワクチン確保を急ぎ、国内メーカーの開発競争も続くが、われわれはいつワクチンを接種できるのか。
英オックスフォード大のチームは既に英国やブラジルで大規模な最終試験に進み、安全性や有効性を確認している。共同開発する英製薬大手アストラゼネカは9月の供給開始を表明、欧米諸国がワクチンの確保で合意している。日本政府も同社と確保を協議。同社は8月にも日本で治験を始める方向だ。
国内では、塩野義製薬とバイオ医薬品を手掛ける子会社のUMNファーマ(秋田市)、国立感染症研究所が共同でワクチン開発を進めている。遺伝子組替え技術を用いた培養細胞によりコロナウイルスのタンパク質(抗原)を製造。これを人に投与する仕組み。2021年秋の発売を目指すが、治験の結果が出る前の段階で生産体制を強化し、同年末までに年間3000万人分以上の生産体制を整えるという。
バイオベンチャーのアンジェス(大阪府茨木市)と大阪大などが共同開発した「DNAワクチン」は、今月から国内初の治験を行っている。
明治グループの製薬会社KMバイオロジクスは、東大や国立感染症研究所と共同で不活性化したコロナウイルスを人に投与するワクチンを開発中で、最短で今年11月から治験に入る方針だ。
ワクチン実用化へ大きく前進したのか。アンジェスの創業者で大阪大学大学院寄附講座教授の森下竜一氏はこう語る。
「中国の研究チームのワクチンは、55歳以上では抗体の産生能力が弱く、オックスフォード大などのワクチンは55歳以上には投与していない。つまり肝心の高齢者でのワクチンの効果にまだ不明瞭な点が多いということだ。そのほかのワクチン開発が海外で進んでいても有効性や安全性、供給量などの面が未確定である以上、国産ワクチン開発の手を緩めるべきではないだろう。複数のワクチンがあれば、年齢層ごとに適したワクチンを投与するなど使い分けもできる」
国内でのワクチン供給はいつごろなのか。森下氏は「はっきり言えば『神のみぞ知る』ということだろう。アンジェスなどの研究について言えば、10~11月ごろには大規模な治験に入る見込みも立っている。来年の春にはワクチンの供給に踏み切りたいところだ。ただ、東京都を中心とした感染拡大が進めば開発チームへのプレッシャーは大きくなるだろうし、政府においてどういう形でワクチンを調達するか早急に明らかにしてもらえるとスケジュールを立てやすい」と語った。