残業176時間「ごめん、辛抱できん」 近大職員が自殺 労災認定求め国提訴

近畿大の事務職員だった男性(当時40歳)が自殺したのは過労が原因だとして、男性の妻(46)が、労災保険の遺族補償給付を不支給とした国の処分を取り消し、労災と認めるよう求める訴えを大阪地裁に起こした。残業時間は死亡直前の1カ月で176時間に及び、男性は「生きてるのがしんどくなりました」などと遺書を残していた。5日に第1回口頭弁論があり、国側は争う姿勢を示した。
訴状などによると、男性は2015年4月に総務部の課長補佐になり、卒業生が加入する校友会との連絡調整を担当。国内外の卒業生らが集まるイベント準備に追われていた同年7月8日夜、職場で命を絶った。
過労死ライン100時間を超過
パソコンの利用状況によると、同年6月中旬以降、過去1カ月間の残業時間は「過労死ライン」とされる100時間を超過。死亡直前には176時間に達し、連続勤務は24日間に及んだ。男性はメモ用紙に家族宛てのメッセージを残し、妻には「ごめん、辛抱出来んようになった」、子どもたちには「野球・受験頑張れ」「笑顔忘れず 頑張れ」などとつづっていた。
東大阪労働基準監督署は17年8月、男性がストレスなどによる精神障害を15年6月中旬に発症したと認定した。しかし、残業時間は発症直前に月107時間だったものの、前月の68時間から倍増していない点などを考慮。業務による負担が労災要件に該当しないと判断し、遺族補償給付を不支給とした。
一方、遺族側は、残業時間が月160~170時間台だった7月2~5日ごろに精神障害を発症したと主張。自殺直前まで残業が増え続け、業務の負担が重くなっていたと訴えている。
妻は代理人弁護士を通じ、「労基署が発症時期を決めると、それ以降にどれだけ残業があっても評価してもらえないのはおかしい。労災だったと認めてほしい」とのコメントを寄せた。
近大とは和解成立
遺族側は16年、近大に損害賠償を求めて提訴し、19年に和解が成立した。近大広報室は「和解で口外禁止条項があり、詳しい内容は明らかにできないが、職員の過労が起こらないよう適正に労務管理している」と話している。【伊藤遥】
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