コロナは「弱毒化」しているのか? 欧米でも死亡率低下 専門家「無症状多く、判別困難」

日本全国で感染者を出し続ける新型コロナウイルス。ただ、死者数と重症者数の少なさも指摘されている。欧米でもこのところ死亡率が低下していることから、ウイルスが「弱毒化」しているのではないかとの説もある。当否はどうなのか。

東京都の3日の新規感染者数は258人。検査数が減少する週末分が反映される月曜の数字としては高水準だ。先月28日から3日まで7日連続で200人を超え、先月31日と今月1日には450人超を記録したが、この間の重症者数は15~22人にとどまっている。
これについては感染から重症化、死亡までは時間差があることや、医療現場のがんばり、コロナ患者への対処の経験値が向上しているといった理由が考えられるが、SNSなどでは、ウイルスが「弱毒化」しているのではとの推測もある。
ウイルスの変異は、海外でも議論されてきた。ロイターによると、イタリアの著名医師が5月末、新型コロナウイルスが威力を失い、致死力が大幅に低下しているとの見解を示した。世界保健機関(WHO)の疫学専門家が科学的根拠がないと否定するなど論争に発展した。
また、累計感染者466万人、死者が15万人を超えている米国だが、ドナルド・トランプ大統領は、米国の死者の割合が低下したと強調した。これに対して専門家からは、無症状も多い若者の感染が増加したためだとの声もある。
新型コロナウイルスの「弱毒化」説の可能性はどれほどなのか。
「重症者が少ないという点から現時点で弱毒化しているという可能性は考えられる。ただ、明らかなウイルスの変異がみられず証拠がない」と語るのは、東北大学災害科学国際研究所教授の児玉栄一氏(災害感染症学)。
「一般的にウイルスは強毒であり続けると、人を殺して自らの受け皿を失うため拡大しにくくなる。そこでウイルスは自ら病原性を弱めつつ、感染力を高める場合が多い」と解説する。
ただ、「無症状」の事例が多い新型コロナの場合、「弱毒化」説の検証には難点も残るという。児玉氏は「若年層の無症状ないしは軽症の感染者が多く、重症化しやすい高齢者に感染が広がっていないため、本当に弱毒化しているか判別が難しい」と指摘した。