内閣府は7月31日、経済財政諮問会議で「中長期の経済財政に関する試算」(中長期試算)の改訂版を発表した。 今回の試算では、新型コロナウイルスの影響で2020年度の名目経済成長率はマイナス4.1%にまで落ち込み、2021年度にはプラス3.5%に回復する。 より成長率の高い「成長実現ケース」では2025年度の名目GDPは約637兆円になると見込まれている。2020年1月の試算ではこれが約658兆円になると試算されており、新型コロナの経済的打撃の大きさがここにも見て取れる。 ■財政収支悪化の原因は何か もう1つの注目点は、国と地方を合わせた基礎的財政収支(プライマリーバランス)である。政府は2025年度に基礎的財政収支を黒字化する目標を閣議決定している。 2020年1月の試算では、2021年度以降に財政改革がまったく行われなかったとして、2020年代の名目経済成長率を3.5%前後と見込む成長実現ケースでも、基礎的財政収支の黒字化は2027年度になるとしていた。つまり、成長率が高まって追加的に増税しなくても税収が自然に増えるシナリオでも、財政改革なしに2025年度に財政健全化目標は達成できないことを意味していた。 それが、新型コロナの影響を反映した2020年7月の試算では、基礎的財政収支の黒字化は2年後ろ倒しとなって、2029年度となることが示された。 何が原因となって財政収支が悪化するのか。結論から言えば、新型コロナの影響には違いないが、その影響で政策的経費が膨張するからではなく、名目GDPの落ち込みが要因といえる。 中長期試算における政策的経費(基礎的財政収支対象経費ともいう)の試算方法は、2021年度以降の歳出改革は未定であるためにまったく行われないと仮定しつつ、名目GDPが増えるにつれて増加するというものだ。2025年度の国の一般会計での政策的経費は、2020年1月試算では86.0兆円だったの対し、7月試算では84.6兆円となっている。 新型コロナの影響で、1人10万円の特別定額給付金や持続化給付金などを支給して歳出が未曽有の規模に膨らんだものの、それは臨時的な対策であって、感染症が収束すれば不要となる。 ■GDP落ち込みに伴い、税収も減少 加えて、名目GDPが落ち込むことで税収も減ると見込んでいる。2025年度の国の一般会計での税収等は、2020年1月試算では79.1兆円だったの対し、7月試算では76.1兆円となっている。
内閣府は7月31日、経済財政諮問会議で「中長期の経済財政に関する試算」(中長期試算)の改訂版を発表した。
今回の試算では、新型コロナウイルスの影響で2020年度の名目経済成長率はマイナス4.1%にまで落ち込み、2021年度にはプラス3.5%に回復する。
より成長率の高い「成長実現ケース」では2025年度の名目GDPは約637兆円になると見込まれている。2020年1月の試算ではこれが約658兆円になると試算されており、新型コロナの経済的打撃の大きさがここにも見て取れる。
■財政収支悪化の原因は何か
もう1つの注目点は、国と地方を合わせた基礎的財政収支(プライマリーバランス)である。政府は2025年度に基礎的財政収支を黒字化する目標を閣議決定している。
2020年1月の試算では、2021年度以降に財政改革がまったく行われなかったとして、2020年代の名目経済成長率を3.5%前後と見込む成長実現ケースでも、基礎的財政収支の黒字化は2027年度になるとしていた。つまり、成長率が高まって追加的に増税しなくても税収が自然に増えるシナリオでも、財政改革なしに2025年度に財政健全化目標は達成できないことを意味していた。
それが、新型コロナの影響を反映した2020年7月の試算では、基礎的財政収支の黒字化は2年後ろ倒しとなって、2029年度となることが示された。
何が原因となって財政収支が悪化するのか。結論から言えば、新型コロナの影響には違いないが、その影響で政策的経費が膨張するからではなく、名目GDPの落ち込みが要因といえる。
中長期試算における政策的経費(基礎的財政収支対象経費ともいう)の試算方法は、2021年度以降の歳出改革は未定であるためにまったく行われないと仮定しつつ、名目GDPが増えるにつれて増加するというものだ。2025年度の国の一般会計での政策的経費は、2020年1月試算では86.0兆円だったの対し、7月試算では84.6兆円となっている。
新型コロナの影響で、1人10万円の特別定額給付金や持続化給付金などを支給して歳出が未曽有の規模に膨らんだものの、それは臨時的な対策であって、感染症が収束すれば不要となる。
■GDP落ち込みに伴い、税収も減少
加えて、名目GDPが落ち込むことで税収も減ると見込んでいる。2025年度の国の一般会計での税収等は、2020年1月試算では79.1兆円だったの対し、7月試算では76.1兆円となっている。