用水路などへの歩行者や自転車の転落事故が香川県で多発している。今年7月までの約5年半に約1800件の事故が発生し、死亡事故が91件あったことが県のまとめで明らかになった。標識や柵、ガードレールの設置といったハード面の対策は進むが、事故は後を絶たない。このため県と市町は、人的被害の大きかった約400カ所の現場の状況を統一の様式にまとめた「用水路等転落事故カルテ」の作成に乗り出す。事故の傾向を分析し、抑止につなげるのが狙いだ。
6割が65歳以上の高齢者
9月2日に高松市で開かれた「用水路等転落事故防止対策検討委員会」の初会合。有識者や警察、消防、市町の関係者が顔をそろえる中、県の担当者が平成27年~今年7月に発生した転落事故の概要を公表した。
それによると、用水路や河川、池、田畑に転落し県内の各消防本部(局)が出動した事故の件数は約5年半で1836件。年間300件超で推移し、今年もすでに171件発生している。
1836件のうちけがの程度が明らかな1829件の内訳は、死亡91件▽重症205件▽中等症680件▽軽傷・不搬送853件。負傷者の約6割が65歳以上の高齢者だった。
歩いていて転落したケースが54・9%と半数を超え、自転車の24・5%が続いた。
時間帯別では、昼間が約6割を占めたが夜間も3割超だった。17歳以下と65歳以上は昼間の転落が目立ち、18~64歳は夜間の転落がおよそ半数を占めた。
ため池の多さが影響?
香川県道路課によると、転落事故が発生しやすい香川ならではの要因がいくつかあるという。
同県は田畑など耕地面積の比率が高いにもかかわらず年間降水量は少ない。このため農業用の水を確保しようと数多くのため池が造られ、それに伴い、農業用水路が張り巡らされた。
また、1平方キロメートル当たりの道路密度も全国上位で、道路沿いに用水路の整備が進んだケースも多いと考えられる。
用水路の所有者は県や市町、土地改良区などに分かれ、さらに管理者が異なる場合もあるといい、担当者は「総延長は把握できていない」と打ち明ける。
気付かせる対策
用水路などへの転落事故は、香川県に先立ち岡山県で深刻な問題として受け止められていた。
岡山県では、平成25年~昨年9月に173人が用水路や側溝、小川、田畑への転落によって亡くなった。同県は警察や消防とともに転落事故防止策を検討。今年、歩道の進路の先、カーブした道の外側、道路をつなぐ橋の周辺といった転落の危険性が高い箇所を指定し、対策を促すガイドラインをまとめている。
香川県も手をこまぬいているわけではない。
30年、県が管理する道路に接する深さ1メートル以上の用水路などで転落防止対策に着手。約600カ所に優先順位を付けて作業を進め、昨年末までに計26・5キロで整備を終えた。
まず、視線誘導標や分離帯標識を設けて用水路の存在を「気付かせる」対策に重点的に取り組んだ。柵やガードレール、蓋の設置といった用水路に「落ちない」対策も進めた。担当者は「整備が完了した場所ではその後、死亡事故は発生していない」と話す。
さらなる対策を進めるには、過去の事故の傾向を分析する必要があるが、消防が出動した事故のデータでは現場の詳細までは分からない。そこで提案されたのがカルテの作成だ。
各消防が出動した転落事故のうち飲酒や病気といった要因がなく、死亡や重傷を負うなどした401件を対象に選定。担当者が現地を訪れ、用水路の幅や深さ、道路との位置関係、照明の有無などを調査し、写真も添えて、年内をめどにまとめる計画だ。
担当者は「カルテを参考に危険な場所や共通の特徴を把握し、効果的な対策を検討したい」としている。