「もっと高齢者に優しい手続きにできなかったのでしょうか」。1日に始まった高齢者のインフルエンザ予防接種を巡って、京都市の診療所で働く医療事務の女性(44)から、京都新聞の双方向型報道「読者に応える」のLINEにこんな声が寄せられた。今年は新型コロナウイルスの影響で高齢者は接種日が前倒しされ、優先的に接種が受けられる。さらに市は感染予防のため、接種料金の減免申請を郵送に一本化した。取材すると、急きょ変わった接種日や手続きによって混乱が生じていることが分かった。
■接種料金の一部を公費負担
ワクチンの接種は例年、10月中旬から始まる。しかし今年は、政府が新型コロナとの同時流行を懸念し、重症化リスクの高い65歳以上の高齢者や持病がある人が優先的に受けられるよう、接種日の前倒しを決定。10月1日から高齢者らを優先して受け付け、その他の人は26日以降の接種を呼び掛けている。
ワクチンの接種料金は原則自己負担だが、高齢者は「定期接種」の対象となり、一部が公費負担となる。京都市では、通常料金を2千円に設定。さらに所得に応じて、市民税非課税者や生活保護受給者などは無料、総所得額100万円以下の人は1千円、100万円超125万円以下の人は1500円とする減免措置を講じている。
ただ減免を受けるには、市が発行する「自己負担区分証明書」が必要だ。市は例年、区役所の窓口で即日発行していたが、今年は密集を避けるため郵送でのみ受け付けるよう手続きを変更。高齢者は病院へ行く前に申請書を市に送り、証明書が返信されるのを待つ手順が必要になった。市は、返信までに約2週間かかるとしている。
声を寄せてくれた女性によると、その申請書が手に入りにくい状況にあるという。
市は、申請書はワクチン接種が受けられる医療機関や地域包括支援センターなどで入手するよう案内している。実際に女性が勤める診療所でも、9月中旬から配布を始めた。しかし、市から送られてきた申請書はわずか30部。全ての人に配布できる量ではなく、あっという間に無くなったという。女性は2回にわたって計300部の追加送付を市に依頼。しかし、それもすぐには届かなかった。
■「紙でほしいという高齢者多い」
女性は「診療所の受付で『市から医療機関に行ったらあると言われたのにないのか』と立腹される方も多い」と困惑。申請書は市ホームページからもダウンロードできるが、「インターネットができず、紙で欲しいという高齢者は多い。今回に限らずもっとスムーズに高齢者が接種を受けられるように手続き方法を改善してほしい」と訴える。
なぜこんな事態になっているのか。
市内で昨年に予防接種を受けた高齢者らは約20万6千人。うち減免を受けた人は約13万人だった。市は今年、新型コロナの影響で接種を受ける人が増えることを想定し、20万部の申請書を印刷。9月15日の受け付け開始に向け、医療機関には例年より10部多い30部、地域包括支援センターには50部ずつを配布した。
しかし、いざ受け付けが始まると、想定を超える申請が殺到。市によると、1日までの約15日間で、6万5千通近くの申請書が届いたという。郵送申請への一本化にあたって開設した電話相談窓口も、一時つながりにくい状態になった。市の担当者は「コロナの影響で増えるとは想定していたが、申請開始当初にここまで殺到するとは思っていなかった。国が接種日を早めたことも影響しているのでは」と話す。
予想を超える申請者数を受け、市は急きょ、10万部の申請書を追加で発注。電話相談も回線を増やして対応しているが、今もつながりにくい状況は続いている。市医療衛生企画課は「今年は新型コロナの感染予防を重視して申請方法を変更した。電話がつながりにくい状況は徐々に改善されると思うので、まずは電話相談窓口に問い合わせてほしい」と呼び掛けている。問い合わせ先は075(256)8589(平日のみ)。