駐在所勤務の一日は、朝の通学路の見守りから始まる。尾山台駐在所に着任したのは22年前。「当時知り合った子供たちが、自分の子供を連れてくるようになった」。地域で積み重ねた歳月を実感する日々だ。
入庁当初は「50歳を過ぎて機会があれば、やろうかな」という程度の希望だった駐在所勤務。しかし、入庁8年目の蒲田署時代に1人の少女と出会い、更生させた経験がその後の人生を大きく変えた。
当時高校1年の少女は、非行少年らと公園にたむろし、朝帰りすることもあった。世間話を通じて家族に反発する思いを聞きながら、まずは帰宅の門限を決めることを提案。少女の出席日数が足りず高校を留年しそうになったときには、担任の先生に「1度だけチャンスをください」と自ら掛け合い、無事3年間で卒業させることができた。
異動が決まり、蒲田署での最後の泊まり勤務となった日には、少女の母親からケーキとともに感謝の声が届いた。「より地域に近い場所の方が、もっと自分にできることがある」。駐在所勤務への志願を決めた瞬間だった。
駐在所勤務で最も力を入れているのは、制服姿でのパトロールだ。日没の前後には明かりのついていない留守宅を重点的に回り、空き巣などの侵入盗を警戒。井戸端会議をしている主婦を見かければ、「今はガス検針を装った強盗事件が起きている。業者を名乗る人間でも、いきなりドアを開けないで」と声をかける。
着任当時は駐在所管内で月に10件ほど発生していた侵入盗被害は、今では年間1~2件になった。「受け持ち地区の犯罪は格段に押さえ込めている」と自負をのぞかせる一方で、世田谷区の自転車事故が都内ワーストワンという現状には頭を悩ませている。
「次は子供たちが自転車の乗車ルールを学べる交通公園を造りたい」。地域の安全を守る活動に終わりはない。(村嶋和樹、写真も)
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ながえ・まさあき 神奈川県出身。昭和59年入庁。荒川署、蒲田署などを経て、平成10年から現職。妻の久美子さん(55)との間に1男2女。趣味は音楽鑑賞で、町会の新年会では南こうせつ「夢一夜」や吉幾三「雪国」を熱唱している。
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第90回都民の警察官表彰式は、14日午後1時から千代田区大手町の大手町サンケイプラザで行われる。