三重県名張市で1961年に5人が死亡した「名張毒ぶどう酒事件」で、奥西勝・元死刑囚の弁護団は28日、ぶどう酒瓶の王冠を覆っていた封かん紙から、製造段階とは違うのりの成分が検出されたとする再鑑定の結果を、第10次再審請求の異議審が行われている名古屋高裁に新証拠として提出した。弁護団は「封かん紙が貼り直されたことが明らかになった。真犯人が偽装工作をした可能性を示している」と主張している。
封かん紙の裏面9カ所を赤外線で測定。製造時に塗られたのりとは別に、一般家庭で洗濯などに使われていた合成樹脂製のりの成分が8カ所から検出された。
弁護団は2016年にも封かん紙を鑑定し、5カ所で違うのりの成分が検出されたとする結果を第10次再審請求で提出したが、高裁は分析結果が誤っているとして退けた。今回の再鑑定は20年7月に高裁が許可し、違う方法で鑑定が行われた。名古屋市内で記者会見した鈴木泉弁護団長は「結果をより裏付けるため、鑑定した専門家の証人尋問を求めている」と話した。
この事件では61年3月、名張市葛尾で開かれた懇親会で、毒が混入されたぶどう酒を飲んだ女性5人が死亡した。奥西元死刑囚は15年10月、収監先の八王子医療刑務所で死亡。妹の岡美代子さん(90)が再審請求を引き継いだ。【井口慎太郎】