精子提供で生まれた子ら「出自知る権利認めて」 生殖補助医療法案修正求める

「出自が分からず苦しむ子どもの問題を、これ以上先延ばしにしないで」--。精子提供で生まれた当事者らが24日、東京都内で記者会見し、今国会に提出された生殖補助医療法案について、子の出自を知る権利を盛り込むなどの修正を求めた。法案は、不妊治療で第三者の精子や卵子を使って出産した場合の親子関係を定めるもので、今国会で成立する見通し。当事者らは「生殖補助医療に対する法的規制があいまいなまま、精子・卵子提供を認めるのは問題だ」と訴えた。
精子提供で生まれたこと知り「人生崩れた」
法案は、生殖補助医療の基本理念、国と医療関係者の責務などを定めるとともに、その技術で生まれた子の親子関係について民法の特例を規定。第三者の卵子で出産する場合、提供者ではなく産んだ女性を母とし、第三者の精子を利用し妊娠した場合、夫が同意していれば生まれた子の父であることを否認できないとしている。
一方、生まれた子の出自を知る権利や、代理出産の可否といった規制のあり方などは「2年をめどに法制上の措置を講じる」と付則に盛り込んだ。
会見には、非配偶者間の人工授精で生まれた当事者グループから石塚幸子さん(41)と50代女性が出席。石塚さんは23歳の時、父親に遺伝性の病気が判明したことがきっかけで、母親から「父親とは血がつながっていない」と知らされた。「親子の信頼関係が壊れ、自分の人生が崩れる感覚に苦しんだ」と話す。さらに「提供者が分からないと、自身の遺伝情報や、きょうだいがいるのか、近親婚に至る可能性はないのかなども全く分からない。提供者情報の管理、情報開示、親から子への適切な告知や相談体制といったシステムが整わないなら、この技術は行われるべきではない」と訴えた。
「規制ないまま認めていいのか」法案に懸念
すでに2003年には厚生労働省の部会で、生殖補助医療で生まれた子が希望すれば、15歳以降に提供者の個人情報を全面開示すると盛り込んだ報告書がまとめられ、法制化の動きもあったが実現していない。スウェーデンやオーストラリア、英国などで提供者を特定する情報開示を認めている。会見に出席した50代女性は「今回の法案は当時より議論が後退している。いつになれば私たちの声が反映されるのか」と嘆いた。
また、日本産科婦人科学会は第三者の卵子提供による出産を認めていないが、この法案が成立すれば、国が事実上、卵子提供を認める形になる。会見に出た明治学院大の柘植あづみ教授(医療人類学)は「提供者の登録や情報管理、提供による出産を独身女性や同性カップルにも認めるのかなど、課題が山積している。2年で結論が得られるのか。規制がないまま推進すれば商業的なあっせんが広がり、提供者の優生学的な選別が進む可能性もある」と警鐘を鳴らす。現状では提供者の情報や、凍結保存の受精卵などの廃棄・使用についても個々の病院任せであり「情報管理や開示の制度を一刻も早く作るべきだ」と訴えた。【中川聡子】