【国家の流儀】中国などから国内に…題して「GoTo国内回帰」 生産拠点を移す企業に補助金や減税

新型コロナウイルスの感染拡大と経済をいかに両立させていくのか、世界各国は模索を続けている。
しかも、第2、第3の新型コロナが感染拡大をする恐れもあり、世界各国は、ワクチンなどの開発に全力を傾けるだけでなく、マスクをはじめとする医療材料などの供給をある程度、自国で賄える態勢を構築しようとしている。
日本政府も4月7日に閣議決定をした「緊急経済対策」において、医療関係などの生産拠点の国内回帰を後押しすべく2200億円の予算が計上された。その決定を受けて5月22日、経済産業省は「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」の公募を開始した。
その目的は、《新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、我が国のサプライチェーンの脆弱(ぜいじゃく)性が顕在化したことから、生産拠点の集中度が高い製品・部素材、又は国民が健康な生活を営む上で重要な製品・部素材に関し、国内の生産拠点等の整備を進めることにより、製品・部素材の円滑な供給を確保するなど、サプライチェーンの強靱(きょうじん)化を図ること》だ。
具体的には、中国など外国から生産拠点を国内に移すに際して「工場」または「物流施設」を新設する場合、1件につき150億円を上限に、事業期間は原則3年以内で、大企業なら半額、中小企業なら3分の2以下まで補助するというものだ。
この公募に対して意外なことに、申請が殺到した。7月22日までのわずか3カ月の間に1670件、金額にして8倍近い約1兆7640億円の申請があったのだ。
政府の支援があるならば、国内の生産拠点を移したいと考える企業がこれほど多かったことに、政府側も驚きを隠せなかった。よって、10月16日の閣議において予備費による860億円の追加措置が決定され、国内投資促進事業費補助金は合計3060億円となった。
だが、これでも申請額の6分の1に過ぎず、残りの1兆4580億円の申請は却下されてしまう。その機会損失は膨大だ。これだけの金額が国内の生産拠点の新設に投じられれば、国内の雇用拡大にも大きく貢献しよう。しかも生産拠点の拡大は物流の増加にもつながり、公共交通機関の売り上げ減少対策にもなる。
実は企業支援は、補助金だけではない。減税というやり方もある。
例えば、中国などから生産拠点を国内に移す企業に対しては工場や物流施設の新設費用の半分まで、法人税などを向こう3年間、「減税」するという措置はとれないものか。題して「GoTo国内回帰」だ。
補助金が足りないなら、投資「減税」で、残りの1兆4580億円の申請をなんとか活用したいものである。=おわり
■江崎道朗(えざき・みちお) 評論家。1962年、東京都生まれ。九州大学卒業後、月刊誌編集や団体職員、国会議員政策スタッフを務め、現職。安全保障やインテリジェンス、近現代史研究などに幅広い知見を有する。著書『日本は誰と戦ったのか』(KKベストセラーズ)で2018年、アパ日本再興大賞を受賞、19年はフジサンケイグループの正論新風賞を受賞した。著書・共著に『危うい国・日本』(ワック)、『インテリジェンスと保守自由主義-新型コロナに見る日本の動向』(青林堂)など多数。