新型コロナウイルスの感染拡大で、病院や宿泊療養施設に入らない自宅療養者の数が増えている。無症状者が多いことなどが背景にあるとされ、健康観察を担う保健所には大きな負担がのしかかる。東京都は管轄エリアの関連業務を新設センターに一元化し、保健所業務の軽減と自宅療養者への対応強化を進めるが、その取り組みが結果的に宿泊療養を促す流れを弱めかねないという懸念も抱える。
「自宅療養者が増えることで健康観察などの業務量がこれ以上増えないか心配している」。107人(9日時点)の自宅療養者を抱える東京都世田谷区の世田谷保健所の担当者は危機感をあらわにした。電話で発熱の有無など体調の変化を聞き取り、必要に応じ入院を手配するが、最近の感染拡大で、この業務に時間がかかることもあるという。
感染第2波に見舞われていた8月上旬、厚生労働省は原則宿泊療養とする軽症者、無症状者が自宅療養するための条件を明確化。自治体による宿泊療養施設確保が困難な場合などは、臨時応急的な措置として、「一人暮らしで自立生活が可能」「同居家族が重症化リスクのある人らの場合は生活空間を完全に分けることができる」などに当てはまれば可能とした。
こうした流れの中で迎えた第3波。全国の自宅療養者は今月2日時点で6271人となり、8月5日時点に比べて約1・8倍に達した。東京都の自宅療養者数は今月4日に1159人を記録。都によると、検査体制が充実し、無症状者の感染判明が増加したことが、数字を押し上げる大きな要因とみられている。
都は自前で保健所を持つ23区と八王子、町田両市以外の地域に保健所を設置しており、自宅療養者の健康観察などを担っている。9月からは自宅療養者が無料通信アプリ「LINE」を通じて熱やせきの有無など健康観察の15項目を報告するシステムを順次保健所に導入するなど、対応を強化している。
11月中旬には保健所に代わって健康観察、医療相談、業者による食料品配送の手配を一元的に行うセンターを新設し、24時間体制で体調不安などの電話を受け付けている。都幹部は「スムーズに自宅療養者のケアを行うノウハウが蓄積されてきた」と手応えを語る。
23区と八王子、町田両市にもセンターの説明をしており、希望する自治体には参加してもらう方針だ。都関係者は「食料品の配送を実施している自治体の中には職員が届けるケースもあったと聞いている。参加すれば負担軽減につながるのではないか」と話す。
一方で、都は一般にはセンター設置について大々的にアピールしていない。「自宅療養対策強化は必要だが、『自宅が快適』となって宿泊療養にいかなくなる懸念もつきまとう。非常に悩ましい」。都関係者はその意図をこう説明する。
現在、都内の宿泊療養施設は9施設で約1900人の受け入れが可能。まだ空きがある状況だが、宿泊療養の対応を充実させるため、近くさらに1施設を追加する予定だ。
都は、10日のモニタリング会議で自宅療養に対する年末年始の体制確保が急務とし、東京iCDC(東京感染症対策センター)で対策を検討していることを報告。その一方で、看護師が常駐する宿泊療養施設の利用を促す方針は堅持するとしている。