コロナ感染者数のカウント方法が違う奈良のプラスマイナス

感染が拡大する新型コロナウイルスをめぐり、奈良県が独自の方法で感染者をカウントしている。通常はPCR検査で新型コロナの陽性が判明すると、感染症法に基づき、病院や保健所が「発生届」を都道府県に提出、各都道府県ではその届をもとに新規感染者をカウントするのが一般的だ。だが、奈良県の場合は「発生届」ではなく、県内の医療機関に入院、または宿泊療養施設に入所した患者らの数を「新規感染者」と定義し、集計している。なぜこうした方法を取っているのか。(桑島浩任)
調査効率化を主張
「患者の中長期的な感染後の情報分析のためには、入院患者ベースでカウントする方が効率的で適切だ」。県医療政策局の鶴田真也局長はこう主張する。
奈良県では感染拡大防止のため、新型コロナの患者は速やかに医療機関への入院か、宿泊療養施設で療養してもらう対応を取っている。入院・療養先をもとに感染経路の調査・分析や、その後の容体の追跡までを一貫して行うため、感染者数も入院・療養者の数でカウントするほうがわかりやすく、効率的だという。
「重要なのは県内の医療体制に対してどの程度の患者がいるのか。県内での感染傾向を分析し、病床の逼迫(ひっぱく)状況を把握するうえで、入院患者ベースの数え方のほうが適切だ」と鶴田局長は指摘する。
奈良県では現時点では隣接する大阪府や京都府などと比べ感染者数が抑えられており、スムーズに入院または入所できている。このため、独自の方法でも「通常と感染者数に大きな乖(かい)離(り)は生まれない」(担当者)としている。
重複、除外のケースも…
ただ、奈良独自のカウント方法では、1人の陽性者が、奈良県と他府県双方で「感染者」としてカウントされるケースも生じている。いわば重複の事例だ。
例えば、他府県で検査を受けて陽性となった人が、奈良県内で入院、入所した場合。「発生届」が提出された他府県で新規感染者としてカウントされるとともに、奈良県でも新規感染者数として数えられる。
県によると、例えば大阪府の会社で職場内感染が発生した場合、奈良県から通勤している人が濃厚接触者であれば、大阪府内で検査を受けることができる。「奈良府民」といわれるほど大阪への通勤者が多い県では、これまでにこうした重複事例が80例(1月14日時点)あったという。
逆のケースもある。
奈良県で検査を受け、陽性となった人が他の都道府県で入院や療養した場合だ。この場合、「発生届」が提出された奈良県では新規感染者としてカウントされず、入院先の自治体でも「発生届」が出されていないためカウントされず、どちらの集計からも「除外」されてしまう形となる。
県はこれまでに29例(1月14日時点)が「除外」されたとしている。
一時混乱も…
奈良県が公表する「新規感染者数」を、一般的なカウント方法で算出する場合は、県が発表する新規感染者の数から、「重複」を引き、そのうえで「除外」を足す必要がある。
奈良県は早い段階から新規感染者の「重複」の数は明らかにしていたが、昨年11月から「除外」の数も公表するように。このため、これ以降、各都道府県別の感染者数を報じている報道機関では、県公表の数字を掲載する社と、計算しなおす社に分かれるなど一時混乱が生じた。
新規感染者のカウント方法について厚生労働省の担当者は「カウント方法について指示はしていない」とする一方で「発生届ベースでカウントするのが一般的で、奈良県のようなカウント方法をとっている自治体は他に聞いたことがない」とも。厚労省のデータベースには、奈良県の基準で送られてくる報告から、重複や除外分を修正した人数が登録されている。
今年1月8日には、1日の感染者数が56人と過去最多となるなど感染拡大の兆しも見える奈良県。現時点では「他府県と足並みをそろえるという考え方もあったが、独自のカウント方法を続ける」(鶴田局長)としている。