氷点下の路上生活 休息場所撤去、死と隣り合わせ コロナ下の札幌を歩く

新型コロナウイルスの感染拡大は、あらゆる人々の営みに大きな影響を及ぼしている。札幌市の路上生活者も例外ではなく、「3密」回避で休息の場所を奪われた。路上生活者を支援する同市のボランティア団体「北海道の労働と福祉を考える会」(労福会)が24日未明に市中心部で実施したホームレスの人数調査に同行。厳寒とコロナ禍で静まりかえった街を歩き、過酷な現場を訪ねた。【真貝恒平】
24日午前1時、札幌市中央区の大通公園に面するビルの電光温度計は氷点下8度を表示していた。市役所地下1階に労福会のメンバーら約40人が、同市から委託を受けた厚生労働省のホームレスの人数調査を行うために集まった。調査は毎年1月ごろに実施。集計結果は厚労省が生活困窮者自立支援法などに基づいた施策を策定するための公式データとして利用される。
同会は毎月第4週以外の土曜日午後7時から約2時間、JR札幌駅や大通、狸小路周辺で暮らす路上生活者にカイロや菓子パン、飲み物を渡しながら困り事などを聞く。現在は新型コロナ感染予防のためマスクも配布する。健康診断や就労、生活保護相談に同行する「同伴」、食事や生活必需品を配る「炊き出し」も続ける。
調査は、路上生活者の移動が少ない深夜に実施。休息している人もいるため、声を掛けず人数を確認していく。午前2時、市全域を10地区に分け、各グループ3~4人で徒歩や車で現地に向かった。街灯もない狭い路地をくぐり抜け、バスターミナル、コインランドリー、立体駐車場など経験を頼りに居場所を探した。
30分ほど歩いてメンバーが足を止めた。地下歩道への階段。暗闇の中、段ボールを敷き、何枚も重ね着をして壁に寄りかかる男性に出会った。男性はこちらの様子に気付いた様子もなく、じっと目をつぶっていた。路上生活者の多くは駅周辺や地下街で過ごすが、午前0時前後から早朝の同5時ごろまではシャッターが下り、地下街から閉め出される。厳寒の中、休息は死と隣り合わせだ。
コロナ禍は路上生活者の日常も変えた。同会によると、寒さをしのぐため、夜中は歩き続け、日中は暖かい場所で過ごすことが多いが、感染防止策のため市中心部のベンチなどが撤去され、日中の休息する場が少なくなったという。
調査は午前6時に終了。厚労省が結果をまとめ、数カ月後に都道府県別などで発表する。同省によると、路上生活者はリーマン・ショック(2008年)時には同市で109人だったが、徐々に減り続け、最近5年間では30~40人で推移。同会が昨夏に実施した独自調査では約40人で、今回の調査でも変化はうかがえなかった。
終息が見通せない感染拡大は生活を圧迫し、経済を疲弊させている。市によると、生活保護の申請件数は前年並みで現時点で影響は見られない。
だが、札幌市ホームレス相談支援センター「ジョイン」のスタッフとして働く同会副代表の小川遼さん(28)は「コロナ禍が長引けば、路上生活者が増える可能性がある」と指摘。「失業者を中心に貸し付ける国の総合支援資金などで何とか生活している人は多いが、貸し付けが延長されなければ困窮する人が一気に増える。路上生活に入る前に生活保護につなげることが必要」と強調する。
調査に参加した大学院生の亀山裕樹さん(23)は貧困問題をテーマに研究しているという。「自分が住む街には普段見ることができない光景があることに気付かされた。多くの人が苦しい思いをしている今だからこそ、自分に何ができるか考えたい」と話した。
北海道の労働と福祉を考える会
1990年代後半、北海道大の学生らが、JR札幌駅に近い高架下の「エルムの里公園」でテント暮らしをしていた路上生活者の支援をしたのをきっかけに99年11月に設立。現在、大学生や社会人など幅広い年代の約40人が所属している。