新型コロナウイルスを巡る保健所業務が逼迫(ひっぱく)する中、埼玉県越谷市保健所は、市消防から応援職員の受け入れを始めた。病院や宿泊療養施設への患者の移送を任せ、人手不足を補う。緊急事態宣言下、保健所と消防の人事交流は県内でも珍しい。
新型コロナを巡る保健所の業務は、市民の健康相談とPCR検査への誘導▽陽性者の入院調整と疫学調査▽濃厚接触者の把握と検査▽自宅療養者に対する電話による健康観察――など多岐にわたる。それらの通知・報告書作成や報道・広報のほか、重要なのが感染者の移送だ。公共交通機関は使えないため、重症者らの救急搬送以外、原則として保健所職員が担当していた。
越谷市直轄の市保健所では、感染拡大の「第1波」当初は原繁所長以下、感染症担当の職員20人(うち保健師8人)で対応。「第2波」の2020年7月以降は市役所本庁などから職員12人(同4人)を集めて計32人で対応した。移送も事務職員らが感染防止策を取った上で交代で行った。
しかし、同12月以降の「第3波」で業務量が増大。年明けは感染者が週150人超、PCR検査数も市全体で週1000件超と急拡大し、職員の多くが深夜まで残業。休みも週1日取れるかどうかといい、過労で体調を崩す職員も出始めた。
そこで市消防本部が「移送はうちが専門で即戦力。外部に委託すれば費用もかかる」と応援を提案。消防署で事務などに当たる60歳以上の再任用職員8人が手を挙げ、1月20日からワゴン車2台で移送や独居者への食料支援に当たる。ベテランの消防・救急マンが対応することに、保健所内や患者側には安心感もあるようだ。
渡辺智行・保健総務課長は「限界の状況下で助かる」と言う。市消防本部の斎藤紀明総務課長は「緊急時なので、『オール越谷』で分担していきたい」と話す。
県直轄の13保健所の場合、これまで県や市町村から保健師27人、健康観察要員53人、事務作業員28人など職員約140人が応援に入った。移送業務はタクシー会社に25台分を委託し、職員が同乗している。【武田良敬】