福島県南相馬市のソウルフードの一つ「アイスまんじゅう」。アイスクリームで練り餡(あん)を包み込んだユニークな氷菓だ。 アイスまんじゅうを名乗る商品は、日本各地で売られているが、南相馬市にある松永牛乳のアイスまんじゅうは約70年の歴史がある。アイスまんじゅう界では「老舗」と言ってよいだろう。 ことしの3月11日で東日本大震災から10年となるが、南相馬市はとりわけ福島第1原発の事故の影響が大きかった自治体である。この地で、松永牛乳は、大手企業の乳製品を受注生産しながら、アイスまんじゅうなど自社製品を作り続けてきた。 震災からの10年をどのように見てきたのだろうか。松永牛乳の井上禄也(いのうえ・ろくや)社長に聞いた。(ライター・土井大輔) ●そして、誰も助けてくれなくなった ――東日本大震災から10年となります。この間、どのような変化がありましたか? 震災のときに人の心に刷り込まれたものは、強く残っているものです。放射性物質に対する恐怖だったり、災害に遭ったときに誰も助けてくれないんじゃないかという感覚です。そういうものが蔓延しているように思います。 国・政府が、福島を力強く助けてくれていたら、「福島ってかわいそうだよね」というのはなくなるはずなんですけれども、まだぐだぐだと続いています。「かわいそう」が止まらないということは、その裏に「ああいうふうになりたくないよね」という面もあるわけです。 ということは、「災害に遭ったときに助けてもらえないのでは?」という恐怖感が、みんなの中に入り込んだのかもしれないなと思うんですよ。 そして、昨年から新型コロナの感染拡大があって、今度は本当に誰も助けてくれなくなった。 震災のときは、外の人が助けてくれました。福島・宮城・岩手の外の人は「日常」を維持できていたからです。でも、今は、新型コロナが全国的に広がってしまったので、誰も助けてくれない。自分たちの力で生きていくしかなくなったと思います。 ――日本全体が自分を優先せざるを得なくなってしまった、ということですかね。 誰しも生きていかねばならないので、それは当然だと思います。 ただ、わたしは震災後の2014年、社長になったんですが、生きていくには、従業員の力がないとダメということに気づきました。 だから、わたしを生かしてくれる従業員がすごく大事になる。地域の人、うちの商品を買ってくれる人もすごく大事です。仲間や知り合いも、一周まわって、すごく大事に思えてくる。利己から一周まわって利他になってくるんですよね。
福島県南相馬市のソウルフードの一つ「アイスまんじゅう」。アイスクリームで練り餡(あん)を包み込んだユニークな氷菓だ。
アイスまんじゅうを名乗る商品は、日本各地で売られているが、南相馬市にある松永牛乳のアイスまんじゅうは約70年の歴史がある。アイスまんじゅう界では「老舗」と言ってよいだろう。
ことしの3月11日で東日本大震災から10年となるが、南相馬市はとりわけ福島第1原発の事故の影響が大きかった自治体である。この地で、松永牛乳は、大手企業の乳製品を受注生産しながら、アイスまんじゅうなど自社製品を作り続けてきた。
震災からの10年をどのように見てきたのだろうか。松永牛乳の井上禄也(いのうえ・ろくや)社長に聞いた。(ライター・土井大輔)
――東日本大震災から10年となります。この間、どのような変化がありましたか?
震災のときに人の心に刷り込まれたものは、強く残っているものです。放射性物質に対する恐怖だったり、災害に遭ったときに誰も助けてくれないんじゃないかという感覚です。そういうものが蔓延しているように思います。
国・政府が、福島を力強く助けてくれていたら、「福島ってかわいそうだよね」というのはなくなるはずなんですけれども、まだぐだぐだと続いています。「かわいそう」が止まらないということは、その裏に「ああいうふうになりたくないよね」という面もあるわけです。
ということは、「災害に遭ったときに助けてもらえないのでは?」という恐怖感が、みんなの中に入り込んだのかもしれないなと思うんですよ。
そして、昨年から新型コロナの感染拡大があって、今度は本当に誰も助けてくれなくなった。
震災のときは、外の人が助けてくれました。福島・宮城・岩手の外の人は「日常」を維持できていたからです。でも、今は、新型コロナが全国的に広がってしまったので、誰も助けてくれない。自分たちの力で生きていくしかなくなったと思います。
――日本全体が自分を優先せざるを得なくなってしまった、ということですかね。
誰しも生きていかねばならないので、それは当然だと思います。
ただ、わたしは震災後の2014年、社長になったんですが、生きていくには、従業員の力がないとダメということに気づきました。
だから、わたしを生かしてくれる従業員がすごく大事になる。地域の人、うちの商品を買ってくれる人もすごく大事です。仲間や知り合いも、一周まわって、すごく大事に思えてくる。利己から一周まわって利他になってくるんですよね。