「怪しい勧誘に注意」だけじゃ足りない! 大学・高校でカルト勧誘を断る方法

新入学シーズン。全国の大学では、学生にカルト集団や悪徳商法などへの注意を呼びかける啓発活動が行われる。新入生の皆さんは、「カルトに注意」「怪しい勧誘に注意」といった類いの文書を大学で受け取ったり、ガイダンスを受けたりする場面があることだろう。

とは言え、入学関係の膨大な書類やサークルのチラシを受け取る中で、全て熟読するのも大変だ。いざ怪しげな勧誘を受けた際に、大学から配られた資料をすぐに引っ張り出して読み込めるとも限らない。高校に至っては、カルト勧誘への注意を生徒に呼びかけるのはあまり一般的でもない。

そこで、各大学が呼びかける内容と重複するかもしれないが、カルト勧誘から身を守るための方法をまとめておきたい。

◆カルト勧誘は通年行事

「カルト」とは人権侵害を行う集団のことで、宗教団体以外も含む。たとえばマルチ商法、自己啓発セミナー、政治セクトなどもカルトに含めたり、類似の問題として扱ったりする人もいる。

しかしいずれにせよ、自分にとって不利益になる良からぬものからの勧誘に気をつけようという意味では、細かい定義や分類は不要だ。何を「怪しい」と感じるべきなのか、疑問を感じた場合にはどうすればいいのか。それは宗教でもそれ以外の悪徳商法的なものでも、同じだ。

ここでは「カルト問題」として大学が強く意識している宗教団体の事例をもとに説明するが、注意点や対処法の大まかな原則と捉えて、臨機応変に応用してほしい。

まず大前提として注意してほしいのは、カルト勧誘は新歓行事ではなく通年行事だということだ。

多くの大学は新入学シーズンに新入生への注意喚起を行うし、学内のサークル勧誘に混じってカルト団体が新入生を勧誘するということも実際に行われる。しかし同時に、サークル勧誘シーズン以外でも、学内や周辺で学生に声をかけたり戸別訪問で勧誘したりということも行われているし、カルト団体は新入生だけをターゲットにしているわけではない。学年が上がっても、大学院生になってからでも勧誘されることはある。

これからの学校生活の中で常に気をつけるべき問題だということを、しっかり頭に入れておいてほしい。

◆カルト勧誘は「怪しくない」

次に重要なのは、「怪しい勧誘に注意」してもカルト勧誘対策にならないという点だ。最初から「怪しい」とわかるなら、誰も引っかからない。

カルトの勧誘は一見するだけでは怪しくは思えなかったりする。多少の違和感があっても、カルト側はその点を深く考えさせないように誘導したり、第三者に相談することを防ぐような誘導をしたりもする。

「怪しくない勧誘」にも気をつけなければ、カルト勧誘から身を守ることはできない。

全国の大学がカルト対策に力を入れるようになったきっかけは2006年。韓国発祥の「摂理」(キリスト教福音宣教会)という団体が、若い女性信者を教祖のハーレムに送り込み教祖が性的暴行等を行っていた問題がメディアで大きく報じられたことだった。摂理は日本の大学でも学生を勧誘しており、日本人信者も被害にあっていた。

摂理が厄介なのは、宗教団体であることを(当然団体名も)隠し、宗教勧誘目的であることも隠して、スポーツサークルなどを偽装するという手法をとことん徹底している点だ。

ある元信者は、大学院生時代にサッカー・サークルの勧誘を受け入会。実際に定期的にサッカーをしていたという。そしてサッカー以外にも、たまり場にしているマンションの一室で食事会が頻繁に開かれ、メンバー同士で演劇鑑賞に行くなど、様々な活動があった。食費が安く上がるので食事会に積極的に参加しているうちに、「聖書の勉強もやっている」と言われた。宗教だとわかって疑問は感じたものの「オウム真理教みたいな危ない宗教ではない」と言われ、すでに親密になり気を許していた相手だったことも手伝って、入信した。

「サッカー・サークルに入ったはずなのに、気がついたら宗教をやっていた」

入り口はサッカー・サークル。怪しくない。

入会すると、実際に皆でサッカーをやっている。怪しくない。

怪しくないまま親密になり、警戒感を抱かせないようにしながら徐々にサッカー以外のことに巻き込んでいって、そして入信させる。

入信してみると、信者たちが勧誘した相手に気づかれないところで「Aさんにどこまで(団体の正体や聖書のことを)話すか」「Bさんは誰がどのようにフォローするか」といった調子の打ち合わせを行っており、集団で計画的に勧誘相手を騙し囲い込んでいく様子も目の当たりにした。サッカーをするときには、すでに信者になっているメンバーだけが先に別の場所で集合し、礼拝を済ませてからサッカーの集合場所に行く。

やがて前述の06年の騒動が起こり、問題を感じて脱会したという。

このケースでは、食事会などが開かれているマンションの一室という活動拠点の存在も「怪しい」かどうかの判断の参考になる。サッカーをするサークルが、なぜマンションを借りる? カネを出している組織がバックにある可能性はないか? サッカーと別の目的があるのではないか?

この疑問だけでは決定打にはならない。しかし誘ってきている相手が優しいだとかいい人たちだとかいう雰囲気だけではなく、活動実態を冷静によく見れば、カルトの勧誘には「後から思えばたしかに変だ」と思えるポイントは何かしらあったりはする。

◆素性不明の団体に個人情報を与えない

コロナ禍によってだいぶ事情は変わってしまったが、新歓期に一般のサークル勧誘に紛れてビラまきや声かけをしてくるカルト集団に限って言えば、初期段階で「怪しい」ポイントがあるケースもないではない。

その1つが「チラシを手渡してこない(あっても基本見せるだけ)」という点。あるいは、「チラシにサークルの連絡先や代表者名など所在を明らかにする情報が一切ない」。それでいて、別の場所に連れて行って話をしようとしたり、LINEのIDや携帯電話番号、メールアドレスといった個人情報を聞き出そうとしたりする。「アンケート」の体裁でこれをしようとする団体もある。

彼らがビラを配らなかったり、サークルの連絡先を記載していなかったりする理由は、簡単だ。大学側に捕捉されないようにするためだ。大学によっては、カルト集団が政治セクト系のサークルなどから目の敵にされているケースもあり、それに対する対策の意味も兼ねている場合がある。

優しそうな「先輩」(に見えても実際は他大学の学生だったり、学生ですらない場合もあるのだが)から「LINE交換しない?」と笑顔で言われると、露骨に「い・や・だ!」とは言いにくいかもしれない。そんなときは「チラシをください。興味があったらこちらから連絡します」。興味があるサークルなら、実際に後でチラシの情報を元に説明会等に行けばいい。チラシをくれないなら「じゃあ、さようなら」だ。

自らの情報を相手に与えようとしない団体に対して、自分の情報を与える必要なんかない。チラシをくれない理由を尋ねたり、その是非を議論したりする必要もない。会話をぶった切ってその場を離れることが重要だ。

◆カルトの団体名を暗記しても勧誘は防げない

何人かの大学関係者に話を聞くと、全国の大学で共通して意識されている宗教団体は概ね共通している。

(1)統一教会

現・世界平和統一家庭連合。故・文鮮明(ムン・ソンミョン)が韓国で設立した宗教団体で、現在はその妻・韓鶴子(ハン・ハクジャ)が総裁。霊感商法や合同結婚式などが社会問題化している、日本を代表するカルト団体だ。被害者による訴訟がいくつも起こされている。分派としてサンクチュアリ協会がある。

路上でのアンケートやボランティアサークルなど様々な形態を装い、当初は団体名や宗教勧誘であることを告げずに勧誘した上で、時間をかけて信者にしていく。大学の中では「原理研究会」あるいはその頭文字である「CARP」を名乗ることもある。

(2)キリスト教福音宣教会

前述の摂理。教祖・鄭明析(チョン・ミョンソク)による性的被害が取り沙汰され、教祖は性的暴行の罪で韓国で服役したがすでに出所し、教団に復帰。日本でも活動を続けており、教祖による性的被害については冤罪を主張し反省もしていない。キリスト教を名乗っているが、独自色が強い「キリスト教系新興宗教」とも呼ぶべきもの。

スポーツサークルや文化系サークル、あるいは就活関連のセミナーなど、無尽蔵に多彩な種類のサークルを装って勧誘する。親密になってから、「聖書の勉強」などを持ち出し、教義を刷り込んでから宗教団体であることを明かし入信させる。SNSを通じての勧誘に特に力を入れており、コロナ拡大以降は特にSNSを重視している。

(3)浄土真宗親鸞会

浄土真宗を名乗って入るものの、一般的に知られている浄土真宗の各宗派とは無関係の単特の新興宗教。富山県に本部を置き、全国から信者が集まる。少なくとも学生については高額な献金の被害等を耳にするケースは多くないが、本部に教祖・高森顕徹の法話を聞きに行くための交通費や勧誘活動のための携帯電話料金など、活動にかかる出費がかなりかさむという話は聞く。

「生きる意味を考えるサークル」「古典を学ぶサークル」「大学生活に関する情報発信をするサークル」等のサークルを装う勧誘で有名だったが、大学によるカルト対策の普及によってSNS勧誘や、学外での「仏教講座」「アニメ上映会」「異業種交流会」といったイベントを通じての勧誘にシフトしている。これらの主催者や講師となっている親鸞会信者は、親鸞会を名乗らず「仏教講師」とか「浄土真宗」といった肩書しか名乗っていない場合もある。

(4)顕正会

日蓮正宗から分派した、いわば創価学会の兄弟分のような宗教団体。勧誘対象を車で連れ回しながら勧誘したり、入信を拒んだり脱会しようとした人を監禁したり暴行したりといった調子でしばしば逮捕者が出ている。

よく聞くのは、路上で新聞を渡され声をかけられる勧誘のほか、「大学入学後に高校時代の友人から久しぶりに電話で呼び出されて、出向いてみたら勧誘された」というパターン。宗教勧誘であることを告げずに騙し討ち的に呼び出したりするが、勧誘が始まった段階では「顕正会」であることを隠さない場合が多い(団体名を告げないまま、路上で勧誘した相手を強打施設に連れ込んで入信届を書かせるというケースもある)。

(5)ヨハン東京キリスト教会

日本で設立された韓国系のキリスト教会。もともと「ヨハン早稲田キリスト教会」野菜で知られている。東京以外では「ヨハン○○(地名)キリスト教会」を名乗る支部を擁しているが、現在は各地の教会名は「ヨハン」の文字を含まないものが多くなっている。大学や周辺でゴスペル・コンサート等を自称して勧誘する他、過去のケースでは「留学生との交流する団体」「就活セミナー」などと称して学生や若者を教会に連れて行って勧誘するという手法も確認されている。

この他に、大学や地域によってはオウム真理教(アレフ)がヨガ・サークルを装って勧誘しているケースもある。また全国の大学祭では、幸福の科学が教団名を伏せて「心のエステ」等の名で心理テストのような出展を行い、宗教団体であることを明かさないまま個人情報を収集したり、教祖の言葉を「心理テストの結果」を受けてのメッセージであるかのように装って伝えて教義を刷り込もうとしたりする。

幸福の科学の場合は、出展サークル名で「○○大ハッピー・サイエンス」を名乗るケースが多く(全く違う名称を用いる場合もあるが)、上記の他団体に比べると偽装は徹底していない。大学祭以外、友人経由での勧誘や路上での書籍・チラシ配布といった形での勧誘では、基本的に団体名や目的を偽ることはない。

大学生だけではなく高校生への勧誘もある。学校内で友人から勧誘されるケースばかりではない。繁華街の路上で、駅で、書店で、喫茶店で、様々な場面で声をかけてくる。勧誘する側は、単に年齢を見定めるだけではない。たとえば大学の近くにある店で家具を選んでいたりすれば「新入生かな」と当たりをつけるし、書店や喫茶店で参考書を見ていれば「受験準備中の高校生かな」と当たりをつけて声をかける。道を尋ねるなどの体を装って声をかけることもある。

そして、ここで残念なお知らせだ。具体的な教団名を列挙しておいて申し訳ないが、これらを丸暗記してもカルト勧誘は防げない。

上記の説明でおわかりのとおり、カルトは程度や手法の違いこそあれ、団体名すらまともに名乗らない。大学祭以外の場面での幸福の科学は例外的な存在だ。

団体名や一般にも知られている被害を明らかにして声をかけてくるカルトは存在しない。この記事にある団体や手口と同じだとわかるのは、勧誘に巻き込まれた後のことだ。

◆カルト関連のSNSアカウントを見抜くのは無理

この点は、SNSを介しての勧誘でも同じだ。最初からカルトであることがわかるような形での勧誘はない。

たとえば、プロフィール等で「春から○○大生」などと書いているアカウントは、カルトの勧誘に狙われやすい。しかしハッキリそう書いていなくても、たとえば大学の公式アカウントやサークルや新歓団体のアカウントをフォロー、リツートなどしていて、なおかつアカウント作成時期が今年の3月や4月だったりすれば、カルトでなくてもある程度察しがつく。

カルト勧誘をする側の動機は、基本的に宗教的情熱だ。アルバイトや仕事ではないので、必ずしも効率重視ではなく「数撃ちゃ当たる」だったりもする。だからカルト勧誘に狙われやすいプロフィールの書き方を避けても、何かしらの形で所属大学名などがわかるだけで勧誘されるリスクは生まれる。

大学名がわかっていれば、カルト側は、その大学名を冠した偽装サークルを名乗るアカウントなどで接触してくる。最初はリプライでの会話。その後はDMでの会話に誘導し、さらにLINEや携帯電話などでのやり取りに誘導する。

本格な勧誘に移行するのはこの後だ。SNSで接触した段階でカルト勧誘だと見抜くのは、やはり難しい。

最近、あるニュースサイトで、大学等の公式アカウントがリツイートしているアカウントかどうかによって、信頼できるアカウントかどうか確かめようといったたぐいのことが書いてあった。しかし、これも決定的な予防策にはならない。

外見上、カルトのアカウントは大学側や新歓団体側から見ても、必ずしもカルトかどうか判別できないのだから。大学関連の公式アカウントがそれと知らずにカルトのアカウントをリツイートすることだって、往々にしてあり得る。むしろ、それを見て「カルトのアカウントではない」と安心してしまうことの方が危険だ。

◆当初と違う話が出てきたら関係を切る

カルト勧誘に接触しないようにする方法はない。初期段階でカルトの勧誘だと見抜くこともできない。そういう前提に立って、自己防衛を考える必要がある。

ならばどうするか。ある程度やり取りして気心が知れたように感じていたとしても、カルトの勧誘だとわかった時点で情け容赦なく切ることができるかどうか。これにかかっている。

厳密には、カルトかどうかを確かめる必要もない。勧誘当初の説明と食い違う事実が判明した時点で切ればいい。カルトかどうかわからなくても、ウソをついて勧誘してくるような人間や団体とは関わらないに越したことはない。この発想が重要だ。

連絡があっても返信せず、SNSやLINEならブロック。携帯電話なら着信拒否。それだけでいい。

カルトの側に「さっぱり脈なし」とわからせてやれば、彼らも基本的にムダな深追いはしてこない。容赦なくぶった切ると何か報復をされるのではないかと思うかもしれないが、彼らは特定の個人を狙うストーカーではない。「誰でもいいから勧誘したい」のだ。だから、カルト側に「丁寧に言ってきかせればまだ何とかなるかもしれない」という感触を与えないようにすることがとにかく重要になる。

自力でこういう対応を取りにくいと感じた場合は、大学の学生課やカウンセラーに相談するといい。親や友人でもいい。第三者と事情を共有することで、自分の判断や感覚が正しいかどうかを確認しやすくなる。カルトの側も、第三者の介入がありうる状況だとわかれば、そう無茶な勧誘はしにくくなる。

効果は未知数だが、何なら「やや日刊カルト新聞にチクったから、これ以上しつこくするとネタにされるぞ」と言ってもらっても構わない。私が主宰するニュースサイト「やや日刊カルト新聞」は決して有名ではないが、カルト関係者を取材する際にこの名を告げると嫌な顔で敬遠される程度には、カルト業界での知名度はある。

自力で解決できた場合でも、大学の学生課等への報告はできたらした方がいい。学内にどういう団体の勧誘がどのくらいあるのかを大学側が把握できれば、学生への注意喚起の方法や内容をアップデートできるからだ。

◆議論を挑むのはやめよう

信用できない勧誘とわかった時点で「切ればいい」と書いたが、文字通りスパッと切り捨てるのが理想だ。

関わりを立つ理由を相手に説明する必要もない。いや、しない方がいい。

カルト、特に宗教の場合、信者の多くは真面目で優しくていい人たちだ。団体によって教義や論法は違うにしても、正体を隠して勧誘するのも相手を救済に導くためだから相手のためになることなのだという類いの宗教的な情熱や使命感で行動しているケースが大半だと言っていいくらいだ。

「相手を騙して入信させてやったぜ、ざまあ!」という悪意や意地悪さは、そこにはない。何か悩みや困り事があれば親身に聞いてくれる。それは演技ではなく、本心だったりする。

そういう相手への好意や敬意、場合によっては憧れさえ抱くほど仲良くなった後だと、「実は宗教でした」とわかっても強く反発しない人が多くなる。しかし実際に彼らがやっていることはウソと偽装と隠蔽。「偽装勧誘」だ。

いい人かもしれないが、やっていることは悪いことだ。でも本人は悪いと思っていない。そんな相手に、勧誘を断り連絡を断つ理由を説明したところで納得はしてくれない。それどころか、勧誘を断ろうとする相手の主張に応じて、なだめたり誤魔化したりさらなるウソをついたりして、引き戻そうとする。

先程「数撃ちゃ当たる」と書いた。彼らは何十人、下手したら何百人にも声をかけて勧誘してきている。当然、勧誘を拒絶する相手とのやり取りも数え切れないほど重ねてきている百戦錬磨の勧誘戦士だ。そんな人にわかってもらおうとして会話を重ねても、あるいは論破してやろうと理屈を並べても、口で勝てるわけがない。

むしろ言いくるめられ深みにハマるリスクの方が高い。実際、私の大学生時代に大学内で自己啓発セミナーが流行していたのだが、「友人を巻き込んだセミナー会社のやつを論破してくる」とばかりに出かけていった友人が、見事に自己啓発セミナーにハマって周囲を勧誘しまくっていた。

だから、勧誘を断る際に説明や議論はすべきではない。容赦なく切り捨てよう。

◆仲の良い友人から誘われたら?

ただし、もともと仲が良かった友人が実は信者で(あるいは信者になってしまって)、勧誘してくるようになった場合は、すっぱり切り捨てるのは難しいかもしれない。切り捨てたところで、授業等で顔を合わせることもあるだろう。そんなときは、宗教の話や勧誘に関連する話だけ拒んで、当人との友人関係はむしろ今まで通り変わらないことを強調しながら関わるという方法もある。

本人が聞き入れてくれるかどうかにもよるので、力加減は臨機応変にとしか言いようがない。しかし、周囲の友人などがこういう対応をしてくれると、ゆくゆくはカルトにハマっている本人のためにもなったりする面もある。

勧誘しない限り友人として付き合ってくれる。カルト信者にとって、そんな友人がいれば、カルト以外の価値観に触れる貴重な機会になるし、いつかカルトでの活動に疑問を抱いた時、「外の世界」を必要以上に怖がったり不安がったりしなくて済む重要な要素になりうる。

カルトをやめるように無理に説得しなくてもいい。「本人のため」と思って説得しようとしても、無理をすると関係が悪化して友人関係そのものが壊れてしまう場合もある。そうなったら長期的な関わりの中で緩やかにカルトを離れる(一般論としては、この方が当人にとっての精神的ダメージが比較的少ない)という道も断たれかねない。緊急の実害がない限り、ほどよくほったらかしてほどよく付き合うというのも、お互い気が楽だったりもする。

逆に、当人が周囲を勧誘しまくって迷惑をかけまくっているとか孤立しているとか、多額の献金のために借金をしようとしているとか、進学や就職を放棄して人生をカルトに捧げようとしているというような、何かしらの実害がある場合。これはもう「友人として」どうこうできる範囲を超えている。大学の学生課やカウンセラーなどに相談し、連携はしつつも直接の対応は専門家に任せたほうがいい。大学関係者なら親との連携もとりやすい(親も信者である場合は難しかったりもするが)。大学以外に、カルト問題に取り組んでいるカウンセラーなどに直接コンタクトを取り相談する方法もある。

◆信者への差別は絶対やめて

勧誘等で迷惑をかけてくる友人に対しては、迷惑に応じた対応をしていいと思う。自分自身の身みを守る上で必要なことだ。

しかし、実害がない「ただ信者であるというだけ」の人について、信仰を理由になじったりからかったり、信仰について言いふらしたり、他の友人達と違う扱いをしたりしないよう、くれぐれも気をつけてほしい。カルトであろうがなかろうが、人に迷惑をかけない限り信仰を持つのは自由だ。カルトの信者にも人権があり、それは皆さんが持っている人権と何ら違いはない。

信者の中には、親が信者であることから事実上強制的に信者にさせられ、それが当たり前のこととして育てられてきた「2世信者」もいる。2世信者が友人などを勧誘することが絶対にないとまでは言わないが、すでに脱会している人、脱会はしていないが疑問を感じている人や勧誘まではしない人、信仰を持つ家族との関係に悩んだり苦しんだりしている人など、様々な人がいる。そうした人たちを、実害もないのに学校や社会の側が傷つけてはいけない。

カルト勧誘を避けることはできない。だから警戒心はしっかり持ってもらいたいが、それはカルトによる人権侵害から自分自身の身を守るためだ。他者の人権に手を突っ込むのは、これとは全く違う。

自分の身を守ることだけではなく、他者の人権という視点も、あわせて意識してほしい。そう考えれば、カルトの勧誘を受けることも、友人の中に信者いることも、全て貴重な社会経験だ。

<取材・文・写真/藤倉善郎>

【藤倉善郎】

ふじくらよしろう●やや日刊カルト新聞総裁兼刑事被告人 Twitter ID:@daily_cult4。1974年、東京生まれ。北海道大学文学部中退。在学中から「北海道大学新聞会」で自己啓発セミナーを取材し、中退後、東京でフリーライターとしてカルト問題のほか、チベット問題やチェルノブイリ・福島第一両原発事故の現場を取材。ライター活動と並行して2009年からニュースサイト「やや日刊カルト新聞」(記者9名)を開設し、主筆として活動。著書に『「カルト宗教」取材したらこうだった』(宝島社新書)