宇都宮市などが整備中の次世代型路面電車(LRT)の総事業費が大幅に増額になった問題で、佐藤栄一市長は25日の定例記者会見で「(増額を)よしと思っていない人たちには謝罪しないといけない」と陳謝した。また、今年度内の公表を掲げてきたJR宇都宮駅西側ルートの選定についても、来年度以降にずれ込むことを明らかにした。【李舜】
佐藤市長は記者会見で、事業費増額とJR宇都宮駅東側ルートの開業が1年遅れることについて「事業全体の問題について謝罪しなければならない」と述べた。西側延伸ルートに関しては「技術的な問題もあり、まだまとまっていない。今回の事業費増額なども関係している」とし、計画策定が来年度以降になるとの見通しを示した。
市は今年1月、総事業費が191億円増え、当初予定額の1・5倍となる684億円まで膨れ上がることを初めて明らかにした。その後、2年前の2018年末時点で、170億円以上の大幅な増額を見込んでいたことが市の内部資料から判明。資料には「選挙時期(市議選、市長選)や反対派の動向などを見極めながら公表のタイミングを検討する」と書かれていた。記者会見で「中立性が求められる公務員が市長と一部の市議に配慮するのは不適切ではないか」と問われた佐藤市長は、「スケジュールの中で選挙を考えるのは問題ないと思うが、公表時期と結びつけるのは不適切だった」と釈明した。
また、2年前の段階で増額の報告を職員から受けていなかったことについては「正確な情報の出し方や事業の進め方を考えていかなければならない」と述べた。
県は支援継続、県議は市政運営を疑問視
LRT事業費の増額については、県が補助金を支出していることもあり、県議会でも議論になった。18日の予算特別委員会で福田富一知事が仮に赤字となっても支援を継続する方針を示したが、与野党問わず宇都宮市の姿勢に批判が出ている。
同委員会で自民党の螺良昭人県議は事業に賛成しつつも「公表のあり方などには問題がある」と指摘。別の自民党県議は「2年前に増額試算が出ているのに市長が報告を受けていないというのは、いいかげんすぎる。党として市長を信頼して支えてきただけに、裏切られた思いだ」と佐藤市長の市政運営を疑問視した。
昨年の市長選で、LRT反対を掲げる新人候補を支援した立憲民主党県連幹事長の松井正一県議も同委員会で「市の文書に『費用便益の確保が困難』と書かれているのは問題。(県の補助金として)県民の税金を投入している以上、採算性が大きな条件」と県の姿勢をただした。松井県議は取材に対し「最終的には事業の是非を問う住民投票を求めることもありえる」と語気を強めた。
世論調査、半数以上が反対
LRT事業に反対する県議会の会派・民主市民クラブ(6人)は2月、宇都宮市内を対象に事業の賛否などを問う世論調査を昨年に続き実施した。調査では事業に反対する人が半数以上を占め、理解が進んでいないことが浮き彫りとなった。
調査は2月14日に実施。有効回答数は500だった。LRT事業に「反対」は前回から6ポイント増の56・1%、「賛成」は1ポイント減の24・8%、「分からない」が5ポイント減の19・2%だった。
「採算がとれない」と答えた人は70・7%(前回63・6%)で、「とれる」は12・2%(同9・4%)にとどまった。西側延伸は「賛成」が28・9%(同27・8%)、「反対」が57・9%(同49・6%)で、依然として反対派が多数を占めた。
この結果について、佐藤市長は「今後、車両の見学会など節目のイベントもあるので、理解を求めていきたい」と話した。