1日午後6時40分ごろ、静岡県牧之原市の布引原地区から坂部地区にかけて、突風が発生した。市は災害対策本部を設置し、2日午後5時時点で建物91棟の被害を確認した。少なくとも車庫など3棟が全壊、家屋など63棟が一部損壊した。隣接する菊川市でも建物被害があり、両市合わせて計97棟に被害が出た。また、静岡市消防局によると、30~60代の男女3人が割れたガラスによる切り傷などの軽傷を負った。
静岡地方気象台は2日、現地を調査し「竜巻の発生した可能性が高い」と判断した。風速は約55メートルで、6段階で風の強さを示す「日本版改良藤田スケール」で4番目に強い「JEF2」だったという。
建物被害は東西約7キロにわたって帯状に広がっているとみられる。牧之原市によると、被害があった一帯では、農業用ビニールハウス10棟、福祉施設や保育園計3棟も損壊。交通に支障のある倒木が7カ所で発生したほか、車両5台が横転、電柱16本が倒壊しており、通行止めの場所もある。停電は市内で最大約1800戸に上った。
気象台によると、1日夕方は寒冷前線を伴った低気圧が日本列島上空を西から東に通過。さらに太平洋上から暖かく湿った空気が流れ込んだことから静岡県上空の大気の状態が不安定となり、牧之原市を含む県中部などに竜巻注意情報が出ていた。
突風被害を受けた地区の住民らは2日朝から片付けに追われた。自宅の一部が損壊した男性(55)は屋外から聞こえてくる音に「最初はひょうが降ってきたと思った」と言う。しかし、すぐに屋根瓦が飛ぶ音と気づいて窓から離れた。すると窓ガラスが割れ、破片が屋内に散乱した。突風が収まって外に出てみると、植木鉢が辺りに転がり、庭の倉庫がバラバラになって隣の家に突き刺さっていた。「竜巻だと思う。もうめちゃくちゃだ」と話した。
自宅庭に散乱する屋根瓦を片づけていた女性(50)は「家族や自分にけががなかったことは不幸中の幸いだった」と語りつつ、「これからの復旧作業のことを考えると気が遠くなる」とため息をついた。【深野麟之介、金子昇太】