昨今の経済現象を鮮やかに切り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。野口悠紀雄氏による連載第42回。 ワクチン接種が進展している国で、感染者数が劇的に減少している。 イスラエルでは、正常な生活が始まっている。イギリスも、感染者が大幅に減少し、夏頃の経済正常化を目指している。アメリカでは、集団免疫の獲得が可能という。国家の強権でなく、科学の力によってコロナを克服できる希望が見えてきた。 しかし、日本では、ワクチンの接種は遅々として進まない。高齢者にかぎっても、完了は来春との見方が示されている。 世界が正常化に向かう中で、日本が取り残される危険がある。 ■ワクチン接種が進む国で感染者が劇減 われわれはついこの間まで、つぎのように考えていた。 欧米では、新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。とくに、変異株によってその傾向が強まっている。それに対して日本では、理由ははっきりしないが、感染者の数は欧米諸国に比べて桁違いに少ない。不幸中の幸いだ。 しかし、この状況は、この数カ月間で一変してしまった。 日本ではいま感染爆発が始まっている。そして、これは、日本に限らず世界共通のことだと考えている人が、日本には多い。 しかし事実はまったく異なる。 ワクチン接種がスムーズに進んでいる国では、感染者数が劇的に減少しているのだ。 その典型が、イスラエル、イギリス、そしてアメリカだ。これらの国では、昨年12月からワクチンの接種が始まっている。 日本とイスラエルを対比すると、ワクチン接種状況の違いが、恐ろしいほど明確に表れている。 図表1には、新規感染者の推移を示す。昨年の秋ごろには、総数で見て、日本とイスラエルにあまり大きな違いがなかった。 (外部配信先では図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください) イスラエルの人口(905万人)は日本の1割以下なので、人口当たりでみれば、イスラエルの感染状況は、日本の10倍以上だったことになる。 そして、11月から12月にかけては、日本もイスラエルもほぼ同じような傾向で増加した。 ところが、今年になってからの状況は、両国で著しく異なる。 日本では2月末から3月にかけて1000人を下回る水準まで低下したのだが、3月下旬から増加に転じ、急増している。いまのところ、減少の見通しがつかない状態だ。 それに対してイスラエルでは、1月末に1万人を超えたのをピークとして、その後は顕著に減少している。
昨今の経済現象を鮮やかに切り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。野口悠紀雄氏による連載第42回。
ワクチン接種が進展している国で、感染者数が劇的に減少している。
イスラエルでは、正常な生活が始まっている。イギリスも、感染者が大幅に減少し、夏頃の経済正常化を目指している。アメリカでは、集団免疫の獲得が可能という。国家の強権でなく、科学の力によってコロナを克服できる希望が見えてきた。
しかし、日本では、ワクチンの接種は遅々として進まない。高齢者にかぎっても、完了は来春との見方が示されている。
世界が正常化に向かう中で、日本が取り残される危険がある。
■ワクチン接種が進む国で感染者が劇減
われわれはついこの間まで、つぎのように考えていた。
欧米では、新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。とくに、変異株によってその傾向が強まっている。それに対して日本では、理由ははっきりしないが、感染者の数は欧米諸国に比べて桁違いに少ない。不幸中の幸いだ。
しかし、この状況は、この数カ月間で一変してしまった。
日本ではいま感染爆発が始まっている。そして、これは、日本に限らず世界共通のことだと考えている人が、日本には多い。
しかし事実はまったく異なる。
ワクチン接種がスムーズに進んでいる国では、感染者数が劇的に減少しているのだ。
その典型が、イスラエル、イギリス、そしてアメリカだ。これらの国では、昨年12月からワクチンの接種が始まっている。
日本とイスラエルを対比すると、ワクチン接種状況の違いが、恐ろしいほど明確に表れている。
図表1には、新規感染者の推移を示す。昨年の秋ごろには、総数で見て、日本とイスラエルにあまり大きな違いがなかった。
(外部配信先では図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)
イスラエルの人口(905万人)は日本の1割以下なので、人口当たりでみれば、イスラエルの感染状況は、日本の10倍以上だったことになる。
そして、11月から12月にかけては、日本もイスラエルもほぼ同じような傾向で増加した。
ところが、今年になってからの状況は、両国で著しく異なる。
日本では2月末から3月にかけて1000人を下回る水準まで低下したのだが、3月下旬から増加に転じ、急増している。いまのところ、減少の見通しがつかない状態だ。
それに対してイスラエルでは、1月末に1万人を超えたのをピークとして、その後は顕著に減少している。